失業や給与の削減など景気の下げ幅が大きな時、弁護士には住宅ローンの滞納に関する相談が多く寄せられます。そうした住宅ローンの支払いが滞ると債権者である金融機関は競売などの手法を用いて債権を回収しようとします。
競売は裁判所を通して物件を売り渡すことですが、通常の市場取引よりもかなり割安な価格で決定することが多いため、所有者にとっては非常にデメリットの多い手法になります。さらに競売での利益は全て債権者である金融機関への住宅ローンの返済に当てられるため、その他のローンの支払いや引越し費用などは基本的には保証されません。
こうした厳しい制約から、物件の所有者の多くは任意売却という方法を選ぶ傾向があります。この手法はおおまかに言えば通常の市場取り引きと同じ流れで物件を売りに出すことができるので、その時の相場の状況によっては住宅ローンの完済も可能です。
さらに売買利益の用途も比較的柔軟性があるので、住宅ローン返済や引っ越し費用など再出発のための資金にもなるので、非常にメリットの多い方法です。
住宅ローンで購入した物件は金融機関が抵当権を設定しているケースがほとんどなので売りには出せませんが、借入先の金融機関から承諾を得ることが出来れば例外的に市場での取り引きが可能になるのです。
こう書くと競売よりも優れているように思えるでしょうがいくつかの条件があります。
金融機関は少しでも早くリスクである滞納された債権を現金化したいので、任意売却が上手くいかないと競売を選びます。しかし、前述の通り所有者は資金面で望ましいので、競売よりも任意売却を望みます。
弁護士などの交渉によっては金融機関や債権回収業者から任意売却の許可を得る事が可能です。しかし、多くの場合半年ほどの制限期間付きのものになります。
つまり金融機関や債権回収業者が強制的に競売で物件を処分できる状況に対し、待ってもらっているという立場なので、この半年という期限は非常に厳しいものになります。物件の購入者が決まっても価格交渉などもありますし、さらに各種の手続にはおよそ一ヶ月ほどの期間を要します。
物件の所有者は弁護士との相談を行いながら、この任意売却の可能期間に買い手を見つけ売買交渉や受け渡しの手続を行う必要があるのです。
そのため多くの方が一人では手に負えず、弁護士や代行業者に依頼するのですが、ここで一つ問題が生じます。
しかし、世の中には任意売却を代行する業者が多数存在するので、どのような基準で選んでようのか迷われる方が多くいらっしゃいます。中には過剰なまでの謳い文句で客を誘う怪しい業者もあるので注意が必要です。そうした玉石混交の中で信用できる弁護士を探すには、やはり任意売却の相談実績を多数持つプロフェッショナルの弁護士に依頼するのが最も効率的です。
または弁護士が数人いる法律事務所などでは任意売却を含む住宅ローンの滞納や債務整理に特化した弁護士が在籍している事が多く、安心してプロに任せる事が出来ます。残念ながら弁護士といえどもその全てがこうした不動産処理に精通しているとは限らないので、必ず公式ホームページなどで実績や経歴を確認してから依頼すると間違いがないと思います。