任意売却は不動産の売却方法の1つで、オーバーローンなどで債務超過状態の不動産を売却するケースが多いです。家をもっていることが原因で生活が苦しくなっている場合に、不動産を売却することで家の持ち主を保護するための制度といえます。
通常、ローンのある不動産には抵当権の設定がされているため、不動産売却は売却時に残債全額を返済してから行われます。しかし、売却代金が残債額より低い場合、手持ち資金から不足しているお金を出さなければ不動産を売ることは現実的に不可能になります。そこで、買収や単純売却などの手法による任意的な売却を行うことで、売却代金が残債額より少ない場合でも、手持ちの資金を出さなくても不動産を売ることが可能となるようにしたものが任意売却です。
任意売却には単純売却と買収といった手法があります。単純売却と買収の大きな違いの一つは、不動産を売却する相手です。買収は、基本的には不動産会社が取引先の相手となります。それに対し、単純売却は主に一般の消費者を相手とします。それぞれにメリットとデメリットがあります。
中でも、買収は任意売却の方法の中で最も早く不動産を売却できる方法といえます。しかし、価格が低くなってしまうという短所があります。また、単純売却は不動産の売却に時間がかかるという短所があります。しかし、販売価格が最も高くなる可能性のある売却方法です。このような方法をとることで、不動産が市場価格に近い価格で取引される可能性が高くなります。
任意売却で再出発する場合、個人でも法人でも、その分野に詳しい専門家への依頼は大きなポイントであるといえます。特に法人の場合、事業の再建計画に基づく債権者や取引先などのとの合意形成のための調整は不可欠で、話をまとめることができる専門家の存在がどうしても必要となります。
任意売却は一般的には、清算型の倒産手続きとして考えられることが多いといえます。倒産手続きには清算型と再建型があり、清算型は任意売却や競売等によって財産が売却処分されることで債権回収がなされることが前提とされています。再建型の倒産手続きには、民事再生や会社更生、私的整理とよばれる方法があります。
しかし、会社所有不動産を任意的に売却することで、残った残債を無理のない範囲で少しづつ返済できるよう返済条件の調整ができれば、しばらくの間は手持ち資金で資金繰りを行うことができます。この間に、事業を黒字化させることにより、新たな事業継続の機会を得ることができ、再出発を図ることができます。
任意売却はそのような場合の戦略的な法人の事業継続の手段として行われる場合もあります。この方法は一般的には多く見られる方法とはいえませんが、専門家のアドバイスの下で行われることにより、より市場価格に近い価格での不動産売却が可能になり、再出発につながる方法であるといえます。
資金繰りが厳しくなり、借りたお金が返せなくなってしまった場合、このままいけば不動産を競売にかけられることになります。競売による不動産売却では、市場価格よりも低い金額で落札されることが多いです。その場合には所有者の意思に関係なく、落札者の示した価格で不動産を手放さなければなりません。競売になってしまうと、不動産を市場価格で落札できるという可能性はかなり低くなり、事業継続どころか自宅まで失うということになってしまったりします。
競売寸前であった場合、迅速に準備を進めることで、競売にかけられる前に任意売却の手続きに入ることができます。そのためには綿密な事業再建計画と債権者も含めた合意形成が不可欠になります。話をまとめる専門家の力量や交渉力、そして事業者がこれまで培ってきた信用などがたいへん大きいといえます。