任意売却の依頼先や売却の流れは、依頼される方がどのような状況にあるのかということによっても違いますし、住宅ローンの借入先が住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)なのか、または民間の金融機関なのかによっても違います。また、任意売却をどの段階で開始したのかということや、債務状況などはケースバイケースで一つとして同じものはありませんから、任意売却にかかる期間も1~6ヶ月程度の幅を見る必要があります。ただし、競売にかかる前に任意売却をしなければいけませんから、のんびりしているわけにはいきません。
任意売却の依頼先や売却の流れを見ていきましょう。
1.住宅ローンの滞納
住宅ローンを滞納すると金融機関から返済を求める催促状などが届くようになります。このころになると、いよいよローンの返済が困難になってきて、どうしたらいいかと考え始めていることと思います。任意売却を知るのもこの段階という方が多いようです。督促状や催促状が届いても支払いが滞る状態が続くと、電話が来るようにもなります。また、期限の利益の喪失の通知書、代位弁済通知書、競売開始決定通知書、競売の期間入札通知書などが届くこともあります。
2.弁護士に相談
催告状や電話がかかってくるようになると、パニックなって冷静な判断ができなくなっているかもしれません。まずは弁護士に相談していただきたいと思います。相談は、不動産業者や任意売却専門業者でもいいのですが、その際も必ず提携している弁護士がいるはずですから、弁護士に直接相談できることを確かめてから、無料電話相談やメールによる相談、または直接相談しに行くか、場合によっては弁護士が依頼者を訪問して面談することも可能です。最初の相談が弁護士でなくてはいけない理由は、弁護士ならば任意売却以外の解決策を提案することができるからです。
3.ヒアリング
弁護士が債務状況や生活状況など、さまざまなことをお伺いします。プライバシーに配慮した環境で徹底的にヒアリングいたします。弁護士には守秘義務がありますから、すべてを包み隠さずお話しください。お伺いしたすべての事情を総合的に判断して、もっともよい方法を弁護士が判断します。任意売却がベストであれば任意売却をおすすめしますし、それ以外の方法(特定調停、個人民事再生、自己破産など)がベストであればその方法をおすすめすることになります。任意売却以外の解決策は、弁護士でなければ手続できないことが多いので、弁護士以外の業者に相談すると任意売却ばかり勧めてくるケースがあるので注意してください。また、離婚や相続などの問題も絡むようであれば、やはり弁護士がすべてを総合的に判断できることになります。
4.物件の査定
任意売却するということになると、自宅物件を査定することになります。これは弁護士が行うのではなく、提携している不動産会社が行うことになります。競売になる前に任意売却を終了させなければいけませんから、査定は迅速に行います。また、任意売却後の残債をできるだけ少なくするためにも、適切な価格で査定いたします。価格が適正でなければ、買い手が見つからなかったり、金融機関が同意しないこともあるからです。
5.債権者との交渉
物件の査定額が算出できれば、債権者と任意売却の交渉が始まります。債権者が複数いる場合であっても、すべての債権者が同意するように弁護士が交渉します。すべての債権者が同意しなければ任意売却はできません。交渉のプロである弁護士が、売却価格の交渉、競売の停止、差押えの取り下げ、残債の返済方法、残債の圧縮、引越し費用のお願いなどを行います。もちろん、弁護士が勝手に決めることはなく、依頼者と相談しながら交渉を進めていきます。
6.売却活動
自宅を売却するための売却活動(販売活動)を行います。依頼者の希望に沿う形での自宅の売却ができるよう心がけています。売却価格を最優先に考えている依頼人もいますし、価格が低くてもいいから、できるだけ早く売却したいというケースもあります。また、家族や仕事の都合なども考慮しなくてはいけないケースもあります。さらに、家族に病人がいたりして自宅を離れるわけにはいかないなど、どうしてもその家に住み続けたいケースもあります。このような場合は、「セール&リースバック」という方法を取ることも可能です。親子間や親族間で売却することで、売却後もその家に住み続けることができる方法です。この方法は競売だと無理なのですが、任意売却であればできることもありますので弁護士からもご提案しますし、万が一、弁護士から提案がなければ相談していただきたいと思います。
7.引越し準備
自宅に住み続けない任意売却の場合は、任意売却が終了する前に引越しをする必要があります。引越しには保証人や敷金・礼金などの費用もかかりますし、引越し自体の費用もかかります。任意売却では最高で30万円から350万円くらいの引越し費用を確保することができるのですが、すべての任意売却で出るものではありません。まれに弁護士が最善を尽くしても確保できないケースもあります。
8.任意売却成立
依頼人の希望にできるだけ沿う内容になるために弁護士が交渉や調整をして、売買契約を締結します。任意売却が成立すれば、物件の所有権移転、抵当権抹消、差押えの取り下げなどの処理が行われます。引越しの後に、売買代金の清算と物件の引き渡しが行われます。引越し費用が確保できたケースであれば、この段階で渡されることになるのが一般的です。