住宅ローンの返済が困難になってしまった物件を売却して住宅ローンを清算するのが任意売却です。任意での売却に応じるので住宅を手放すことになりますが、売却金で住宅ローンが完済できるよう将来利息の一部放棄を含むローン残債の圧縮に同意してもらえれば、住宅を売却しても借金が残ってしまうという最悪の事態を避けることができます。
では任意売却で売りに出された物件というのは、不動産を購入する立場から見るとどのような物件なのでしょうか。
任意売却物件は早急に売却してローンの清算を行う必要があるとき、通常の不動産相場よりも安い価格で売りに出される場合があります。売却期限が設定されていますから期限が近付けばさらに値下がりすることもありますし、購入に際して値引き交渉を行う余地もあります。住宅をとにかく安く買いたいという人にとっては非常にお得な物件といえるでしょう。
どのくらい安くなるのかは物件の状態などによって異なりますが、平均すると同程度の物件に比べて3割程度安い価格で取引される場合があります。いわば卸価格で不動産取引ができるわけですから非常にお得といえるでしょう。
任意売却物件は直前まで購入者が住んでいた物件でのため、優良物件であることが多く安心です。もちろん普通の不動産物件と同じように事前の見学なども行えますから安心です。
任意売却物件購入で注意しなければいけないのが、瑕疵担保責任を売主が負わない約定という点です。通常の不動産売買では不動産の欠陥について売主が責任を負う瑕疵担保責任というものが保証されていますが、任意売却物件では売主の瑕疵担保責任を問うことはできません。現状渡しでノークレームノーリターン、というのがルールなので、購入後の思わぬトラブルを避けるためにも事前のチェックが非常に重要になります。安く購入することはできますが、一定のリスクを背負う必要がある事を理解したうえで購入を判断しなくてはいけません。
任意売却物件は競売物件とは異なるため、取引は通常の不動産取引と同様に進められます特別な資格や手続きなどは必要なく誰でも購入することが可能ですが、いつ物件が売りに出されるのかは誰にもわかりません。ある日突然売りに出されるので良い物件に巡り合えるかどうかは完全に運次第です。
仮に物件が売りに出されたとしても安く購入できる任意売却物件の購入を希望する人は多く、あっというまに買い手が見つかってしまうことも珍しくありません。もし狙うなら、日ごろから情報収集に目を光らせておく必要があります。
任意売却物件は抵当権を外すことに債権者が合意していますから、購入後に権利関係でもめる心配はありません。住宅を手放す債務者側も同意のうえで手続きが進められているので心配はありませんが、通常の不動産取引とは性質が異なる以上トラブルが起こるリスクがわずかながら存在している事も覚悟しておかなくてはいけません。
例えば売主が固定資産税を滞納していた場合、売りに出された物件が差し押さえ対象になってしまう可能性があります。売買契約の代金決算をしてしまえばいいのですが、決算者に差し押さえにあってしまうと売却手続きを進めることができなくなってしまうので注意が必要です。購入してみたら清掃もされておらず業者を自費で入れる羽目になった、ということもあります。小さなトラブルが起きる可能性は高いので、その点については覚悟が必要です。
安く購入できるのが魅力ですが、安さばかりに注目していると思わぬところで足をすくわれる可能性があります。安全性が高いとはいえ通常の不動産取引とは違いますから、購入にあたってはよく物件を知らべて必要な知識を身に付けることが求められます。