借金の支払いが困難になったときには、債務整理によってそれを返済可能な形に整理することができます。
「任意整理」というのは債務整理のひとつで、支払いが困難になった借金の返済について債権者側と話し合い、毎月の利息など支払額を減額してもらう、という方法です。
自己破産のように財産を手放す必要はないので、住宅を残したまま整理をしたいという場合にはとても有効です。
では、任意売却で住宅を手放すことなく、任意整理によって住宅ローンを減額することはできるのでしょうか?
任意整理では、原則として3年以内に返済する形を取ります。したがって、長期に渡る住宅ローンは原則としてその対象とはなっていません。
また、そもそも住宅ローンはほかのローンにくらべて金利も低いので、減額される可能性自体がほとんどないのです。
さらに、住宅ローンは住宅が担保となっていることが多いので、債務整理を行おうとすると債権者はこれを競売にかけてしまうことができます。
競売では相場より低い値段で処分されてしまうので、それくらいなら任意売却を行ってしまったほうがよっぽどましでしょう。
ですので、住宅ローン自体の支払いが困難になった場合は、任意整理で住宅を残そうとするのではなく、まず任意売却によって家を手放すことを考えておいてください。
任意売却であれば、住宅を売却して得られた金額でローン残高を減額することができますし、その後の生活の立て直しもより楽になるはずです。
また、住宅ローンについては任意売却や債務整理を行うまでもなく、返済の見直しを相談すれば、それに応じてくれる金融機関もあります。支払いが困難になりそうだと思ったら、まずは直接事情を話してみるとよいでしょう。
では、住宅ローンを抱えたまま、それ以外の借金を任意整理することは可能なのでしょうか?
住宅ローンの契約には、債務整理を行ったさいには、その時点でローン残高を一括で支払わなければならない、といった規定がある場合があります。
ただし、これは住宅ローンの支払い自体が滞っていなければ、まずそのような請求をされることはありません。したがって、住宅ローンさえしっかり支払っているのであれば、借金に困っているからといって、すぐに任意売却で住宅を手放そうとまで考える必要はありません。
ただし、これはあくまで住宅ローンとは別の金融機関で借入を行っている場合にかぎられます。もしも住宅ローンと同じ金融機関の借金を任意整理しようとするのであれば、規定通りに一括で支払いを求められる可能性はかなり高くなってしまいます。
その場合は結局競売にかけられる流れとなってしまうので、やはり任意売却を先に考えておいたほうがよいでしょう。
また、現在抱えている住宅ローンについては影響はありませんが、任意整理を行うと、その事実は事故情報として個人信用情報機関に登録されることになります。いわゆる「ブラックリスト入り」という状態ですが、この事故情報は金融機関の間で共有されることになります。
したがって、事故情報が登録されている間は、新しく住宅ローンを組むことはかなり難しくなると考えてください。
事故情報が掲載されている期間はそれぞれの信用情報機関によって異なりますが、だいたい5~10年程度となっているようです。
つまり、借金の支払いに困って任意整理を行ってしまうと、10年近くは新しく住宅ローンを含む借金はできなくなる可能性が出てきてしまうので、この点にもよく注意するようにしましょう。
自分の置かれている状況を正しく見きわめ、任意売却を行ったほうがよいのか、それとも任意整理を行ったほうがいいのか、弁護士などの専門家に相談してみるのもよいでしょう。