住宅ローンの契約は、契約者にとっても金融機関にとっても高いリスクを伴うものなので、小規模のキャッシングや自動車ローンに比べてもかなり厳しい審査が行われます。さらに貸し倒れのリスクを避けるために金融機関は購入した物件に対して抵当権を設定し、万が一の住宅ローン滞納時には競売することによって債権を回収できるようになっています。
しかし、近年の雇用不安や金利変動などにより住宅ローンの滞納によるトラブルの相談が増えています。当然先程述べたとおり、住宅ローンの滞納時には金融機関が抵当権を行使して、債権の回収を図りますが、この時点では既に債権は債権回収業者に回っていることが多くあります。
債権回収業者とは金融機関に成り代わって債権の回収を請け負う業者の総称で、サービサーとも呼ばれます。金融機関は多少割り引いてでも焦げ付いた債権のリスクを避けるために、サービサーに債権回収を委託します。このサービサーにとっても焦げ付いた債権は当然高いリスクなので、出来る限り短い期間内での債権回収を狙いますが、住宅ローンなど大きな債権になると、その方法は限られています。
不動産はその他の資産に比べてもすぐに現金化することが難しいですが、現状最も早く現金化を行う方法としてサービサーに推奨されているものが競売です。競売とは裁判所を介した物件の売買で、割安な価格で落札される事が多い代わりに売買が成立しやすいという特徴があります。
これはサービサーの利益に合致するので、通常住宅ローンの回収には競売が用いられることが多いのですが、債務者にとってはデメリットも多くなります。当然競売の性質上割安な価格で物件を手放すことになりますし、競売の情報は一般に広く公開されるので、周囲や親族に住宅ローン滞納の事実を知られるきっかけにもなります。
これらのデメリットから債務者の方の多くは任意売却という方法を選択することを目指します。任意売却とは通常の市場価格に近い値段で物件の取り引きを行えるという非常に魅力的な取引方法ですが、先ほど述べたとおり物件にはサービサーによる抵当権が設定されているため通常の市場取引は不可能です。
しかし、何もこうした売買方法は債務者にだけの利益をもたらすわけではありません。サービサーも当然債権の全額回収が理想なので、高く物件が売れることを拒む理由はありません。当然それが早期であるならばより望ましい訳ですが、それらの折衷案として任意売却が存在します。任意売却では通常約半年ほどの期間を設けられ、その中で物件の市場取引を完了させます。期限を過ぎるとサービサーは物件の競売手続きを進めることになりますが、半年の猶予は非常に魅力的な提示内容であると言えます。
しかし、サービサーのリスク許容度や運営方針によってはこうした任意売却を認めないこともあります。そうした中で任意売却を行う方法としては、粘り強くサービサーと交渉を行うという方法しかありません。しかし、個人の方が債権回収のプロであるサービサーと対等に交渉を行うのは非常に困難です。
万が一競売になってしまえばローンの全額返済はおろか再出発の資金さえも確保出来ない可能性もあるので、まさに運命の分かれ道であると言えます。そうした債務者の利益を守る方法としては、弁護士など交渉のプロに依頼することが望ましいでしょう。弁護士の中には不動産の処理や任意売却を得意としたプロフェッショナルが多数在籍しているので、こうしたトラブルの際には非常に頼りになる存在です。
任意売却の交渉はもちろん、交渉後の実際の任意売却を滞り無く進める方法についても相談が可能なので、ぜひ住宅ローンの滞納に関わるトラブルでお悩みの方は弁護士事務所にご相談下さい。