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法人の任意売却について

一般的に、企業が経営に行きづまってしまい、弁済すべき債務が弁済できなくなった状態になった時には会社を清算して消滅させるか、債務弁済しながら事業を継続するかという選択をすることになります。

会社が経営に行き詰ってしまった場合とは、例えば、2回目の手形不渡りを出してしまい、銀行の取引が停止となる処分を受けた場合や、会社の代表が倒産を認め、債務整理の手続きを進める場合や、裁判所に対して会社が会社更生法の申請をする場合、裁判所に対して民事再生法の手続開始の申請をする場合、裁判所に破産申請を行う場合、そして裁判所に特別清算開始申請をする場合があります。

会社を清算して消滅させる場合には清算を目的とすることが多く、それに対し、債務弁済を行いながら事業を継続する場合には再建を目的とすることが多いといえます。再建を目的とする場合、多くは会社再生法や民事再生法などに基づいて再出発するということになります。

会社更生法の場合、申請対象は株式会社となります。ほとんどの場合が、会社が消滅すると社会的に影響の大きい上場企業や大企業の倒産に適用されます。民事再生法の場合、申請の対象は株式会社や有限会社、学校法人、医療法人などの法人および個人に適用され、経営破綻が深刻化する以前の早期再建を目的としています。

また、清算型の倒産手続きには、破産や特別清算といった方法があります。そして、民事再生や会社更生、私的整理は再建を目的とするもので再建型に分類されます。清算型は任意売却や競売等によって財産が売却処分されることで債権回収がなされることが前提とされています。そのため、任意売却は清算型の倒産手続きとして考えられることが多いといえます。

しかし、この方法が再建型の倒産手続きとして用いられることもあります。会社で所有している不動産に対して任意売却を行って、残った借入金を無理のない範囲で少しづつ返済できるように返済条件の調整ができれば、しばらくの間手持ち資金で資金繰りができます。この間に、事業を黒字化させれば、新たな事業継続の機会を得ることができます。任意売却はそのような場合に、戦略的な法人の事業継続の手段として行われる場合もあるといえます。この方法は一般的にも多くとられている方法とはいえませんが、注目すべき方法ともいえます。

任意売却で再出発を図る場合、不動産を市場価格で売却できるか否かという点がポイントといえます。資金繰りが厳しく、競売寸前であった場合には、迅速に売却の準備を進めることで、不動産が競売にかけられる前に任意売却を行うことができます。競売による不動産売却では、市場価格よりも低い金額で落札されることが多いです。その場合には落札者の示した価格で不動産を手放さなければなりません。

競売になってしまうと、事業継続にまでは至らない可能性が高くなってしまいます。したがって、この点が法人が任意売却を行うメリットであるといえます。

このように、任意売却は通常は、財産が売却処分されることで債権回収が行われることが前提とされている清算型の倒産手続き方法と考えられています。もし、会社で所有している不動産を売却し、残った借入金を無理のない範囲で少しづつ返済できるような返済条件の調整ができれば、しばらくの間は手持ち資金で資金繰りが可能となります。この間に事業が黒字化すれば、事業を継続するための機会を得ることができます。

任意売却はそのような場合に、戦略的にとられる方法といえます。この方法は一般的にそれほど多く用いられている方法とはいえませんが、注目に値する方法です。そして、不動産を市場価格で売却できるか否かという点が大きなポイントになります。

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