住宅ローンの支払いでやりくりしているにもかかわらず、借りたお金が返済できずに困っている場合に、家の持ち主の意思で自宅を売却する方法です。家を持っていることで生活に困っているのであれば、債務超過の状態になっている不動産資産を売却することができます。
不動産を売却する時には通常は、抵当権が設定されているため、売却時に残っている借り入れ全額の返済をしなければ不動産を売ることはできません。しかし、現実的には残っている借入額より売却の代金が少ない場合には、手持ちの資金から不足しているお金を出さなければ不動産を売ることはできません。
そのような時、家の持ち主を保護する観点から、借入額より売却の代金が少ない場合でも家を売却することができるのが任意売却という制度です。そのため、任意売却とは家の持ち主の意志で自宅を売却することといえます。
自宅を手元に残す形で任意売却をしたい、つまり、将来的に家を買い戻したいという気持ちは誰でももつことです。しかし、現実問題としてそのような方法は存在していても、それを実行するのは簡単ではありません。無理をして自宅を手元に残したとしても、その後の生活により困難が生じるのであれば、家のローンで困っている債務者を保護するという任意売却の意味すらなくなってしまいます。
任意売却によって売却した元自宅に住む方法は賃貸借契約を結ぶほかないともいえ、例えば友人または親戚に自宅を買い取ってもらって賃貸借契約を結んで住まわせてもらうということができるのであれば、任意売却をはじめから行う必要性はないといえます。元自宅に賃貸借契約を結んで家賃を払って住まわせてもらうのであれば、営利目的上の 投資として協力することになります。
その場合には、家賃に利益が加算されますので、高い家賃設定となります。任意売却自体が、家の持ち主の意思で行われる以上、居住権を主張することそのものに任意売却という制度に対する矛盾を含むといえます。
自宅が競売にかけられて、買い手がついた場合には現居住者が立ち退かないというケースがないわけではありません。その場合の理由の主なものとしては、立ち退きたいけれども引越し費用が捻出できないという理由があります。その場合、不動産や競売専門の業者の配慮で、引越し費用という名目での立退き料を提供してくれることが一般的に行われています。
しかし、現居住者が引っ越し費用の問題ではなく、どうしても立退きに応じてくれない場合には、現居住者の居住権が認められるのは長くても半年間というのが一般的と考えられています。また、現居住者が居住権を主張して明渡しの拒否をすることは認められていません。どうやっても物件明渡拒否を行う場合には、不動産資産落札者は引き渡し命令という裁判所の許可を得て、強制執行を行うことができます。
強制執行されると、強制的に建物内の家財道具などが建物外に運び出されます。現居住者が強制執行を妨害すれば公務執行妨害として警察に連行されることになります。
このように、任意売却とは家の持ち主の意志で自宅を売却することといえますので、居住権の主張は現行制度に矛盾してしまいます。 自宅を手元に残したい、将来的に家を買い戻したいという気持ちはわかります。しかし、それを実行すればその後の生活により困難が生じてしまう可能性があり、家のローンで困っている債務者を救済するという制度の意味がなくなってしまうといえます。