Q.1 「自己破産」とは、どういう手続ですか。
A.1 「自己破産」とは、破産を債務者自らが申し立てる場合、もしくは債務者自らが申し立てた破産手続をいいます。
個人の債務者の場合は、自己破産申立と免責許可申立とを併せてやります。
自己破産手続は、個人の債務者が債務の免責(債務返済を債権者から強制されないこと)を得る目的で利用され、自己の経済的再起を図れるのです。
個人が自己破産するには、「支払不能」の状態にあることが必要です。
例えば、債務総額が100万円以下でも、生活保護受給者や病気等で資産収入のない人なら、支払不能と認められることがあります。
また例えば、主な財産が退職金見込額(仮に退職したら支給される金額)の 金800万円だけで債務総額が700万円の場合、退職金見込額の4分の3(金600万円)は差押禁止なので、支払不能と認められることがあります。
Q.2 自己破産手続きのメリット・デメリットを説明してください。
A.2 自己破産手続きについては、メリット・デメリットはいくつかございます。
自己破産手続のメリット①
弁護士等に自己破産申立を依頼し、貸金業者に弁護士等からの受任通知が届くと、貸金業者は債務者に取立てや連絡ができなくなります。 もっとも債権者(貸金業者を含む)は、破産開始決定前なら、債権回収のために訴訟を提起することや、差押や仮差押をすることができます。
そこで、自己破産を希望する債務者が、給与差押などをされている場合、できるだけ早く自己破産申立と免責許可申立をして、破産開始決定をもらえば、差押(強制執行)を止められます。但し抵当権などの担保権実行による競売は原則として止まりません。給与差押を受けている(もしくは訴訟をされていて差し押さえを受ける恐れがある)債務者の方は、一日も早く弁護士法人リーガル東京に、ご相談ください。
債権者数が少ない事案簡明な案件なら、大至急申立てしたい事情(給与差押の解除希望等)があれば、債務者が必要書類を揃えられることを条件に、相談受任から破産開始決定まで7日以内に行うこともできます。実例として債権者2社のみの破産管財人付自己破産事件で、受任から破産開始決定まで6日間で行った事案があります。
なお、このような差押(強制執行)中止の効果は、破産手続が同時廃止などで終了しても免責許可決定が確定するまで継続します。
自己破産手続のメリット②
自己破産のメリット②として、破産者(債務者)の免責許可決定が確定すれば、免責の効果として破産手続終了後も、債権者は、督促・訴訟・差押・仮差押などすることができなくなります。但し、免責は債務免除とは違いますので、免責された債務でも自発的に払うと有効な返済になるので、注意してください。
自己破産しても免責されない債権があるのは、デメリットといえるかもしれません。主に、以下の債権が、免責されない債権(非免責債権)です。
㋑所得税・住民税などの税金 br> ㋺悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債権 br> ㋩故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償債権 br> ㊁婚姻費用・養育費等 br> ㋭故意に債権者名簿(破産申立書の債権者一覧表)から除外した債権
また、免責の対象となる債権は、破産手続開始決定時に存在する債権だけです。破産開始決定後に発生した債権(破産開始後の借入など)は、免責の対象になりませんので、注意してください。
自己破産手続は、もっぱら債務者が免責許可を得る目的で利用します。 けれども、以下の事由があると、原則として、免責を許可してもらえないのは、デメリットといえるかもしれません。
- 債権者への配当原資となる財産を隠匿等により不当に減少させる行為をしたこと。 br> 例えば、一部の生命保険金について、多額の解約返戻金があることを隠していたとか、申立直前に多額の預貯金を家族名義に変更したとかの行為などが、これに該当します。
- 不利益な条件で債務を負担し、または信用取引により商品を買い入れて著しく不利益な条件で処分したこと。例えば、クレジットカードで購入した商品を安く転売することなどが、これに該当します。
- 特定の債権者を優遇するような担保の供与や債務の消滅に関する行為をしたこと。 br> 例えば、破産申立直前に、親戚の借金だけ優先的に支払うことなどがこれに該当します。
- 浪費又は賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したこと。 br> 例えば、パチンコや競馬などのキャンブルをするために借金を重ねたり、高額なブランド品を買いあさるなどが、これに該当します。
- 虚偽の債権者名簿を提出したこと。 br> 例えば、債権者名簿に故意に一部債権者を記載しなかったりすれば、これに該当します。
- 破産手続において、裁判所が行う調査において説明を拒み、または虚偽の説明をしたこと。
- 不正の手段により破産管財人等の職務を妨害したこと。
- 過去に免責許可を得て、その許可決定の確定の日から7年以内に免責許可を申立てたこと。
以上の事由の内、2・3・4・5・8の事由については、破産者した債務者が裁判所(ないし破産管財人)に事実を正直に話して、経済的更生の努力姿勢を示している事情があれば、裁量で免責が許可される場合があります。
自己破産手続を利用した場合のデメリットとして、官報に破産者(債務者)の住所・氏名等が掲載されますし、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラック情報)として登録されます。
したがって、破産申立書の債権者一覧表に記載した債権者の外、信用情報や官報情報を定期的にチェックしている金融業者等には、自己破産したことが知られます。
ところで破産者の本籍地の市町村役場の破産者名簿に、免責確定して復権するまで一時的に破産者であることが記載されますが、その名簿は公表されていませんし、戸籍や住民票に記載されるわけでもありません。したがって自己破産したことを他人に知られることは、ほとんどありません。
自己破産した事実が勤務先に通知されることも無いので、勤務先に知られることは一般的にはありません。但し、勤務先も破産開始時に債権者であるときや、勤務先が信用情報を利用する業種(金融機関や保険会社など)の場合は、自己破産したことを知られることがあります。
万一知られても、自己破産したことを理由に解雇することは、できません。 br> しかし、後述の資格制限ある職種は、解雇できる場合があります。
自己破産した場合、一定の資格制限があるというデメリットがあります。
債務者が破産開始決定がされ、破産者となったときは、一定の資格を失うことがあります。その主な資格は、以下のとおりです。
- 生命保険会社の外務員、損害保険代理店
- 証券会社の外務員、警備会社の警備員
- 宅地建物取引主任者
- 弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、税理士
- 株式会社の取締役・監査役、
- 後見人、保佐人
これら資格制限は、免責決定が確定して復権すれば、なくなります。しかし、証券会社の外務員、警備会社の警備員といった資格ある人については、破産したことを理由に解雇されることがあります。
なお破産しても、選挙権・被選挙権には影響ありませんし、医師の資格にも影響しません。
Q.3 自己破産した場合、自己の財産は、全て手放すことになりますか。
A.3 自己破産手続が開始されると、破産者(債務者)の目ぼしい財産は、原則として、全て破産管理財人によって換金処分され、債権者へ配当されます。
- 99万円までの現金 br> 但し、破産申立直前に、預貯金を引出して現金化したとか生命保険を解約して現金化したなどの場合は、認められないことがあります。
- 差押を禁止された動産や債権 br> 例えば、生活保護受給権、年金受給権、衣類家具といった生活用品などです。
- 退職金は、支払見込額の4分の1相当額の差押ができますが、東京地裁などの運用では、支払見込額の8分の1相当額を配当する財産に組み入れればよいとしています。 br> したがって、破産開始決定時の退職金支払見込額が800万円の場合、その8分の1に相当する100万円だけ調達すればよいことになります。もっとも、破産手続中に退職した時は、支払われる退職金の4分の1を配当する財産の中に組み入れる扱いですので、支払額が800万円なら200万円を破産管財人の口座に送金しなければなりません。
- その他東京地裁などでは、一定の種別の財産ごとに20万円を超えない財産は、自由財産を拡張して、破産管財人による換金処分をしなくてよいとされています。例として以下のものがあります。 br> ㋑ 残高合計が20万円以下の預貯金 br> ㋺ 解約返戻金見込額の合計が20万円以下の生命保険 br> ㋩ 処分見込額が20万円以下の自動車 br> ㋥ 電話加入権 br> ㋭ 賃借住居の敷金 br> ㋬ 支払見込額の8分の1に相当する額が20万円以下である退職金
また破産者(債務者)の所有する住宅がオーバーローンの場合、同時廃止または破産管財人による財団放棄により、住宅の管理処分権が債務者に戻ります。そうなったときは、不動産競売や任意売買で、他人の所有物件になるまでは、住み続けられます。
以上のように、「自由財産」とされる範囲は、いろいろありますので、「自己破産したら、財産を全て失い、生活できなくなる」と考えるのは、間違いです。
賃借している住居に住み続けられますし、銀行口座も続けて利用できます。
自分が自己破産したことで、家族が不利益を受ける(家族も信用情報がブラックになるなど)ことはありません。
Q.4 自己破産手続は、どのように進められますか。また破産手続完了の期間は、どの程度ですか。
A.4 自己破産手続の流れは次のとおりです。
Q.5 不動産(住宅など)を所有しています。自己破産する場合、不動産は、自己破産申立前に売却した方がよいでしょうか。
A.5 債務者が不動産(土地建物マンション等)を所有している場合、次の事情があるときは、自己破産申立て前に、売却処分した方が良いです。
(1)債務者が、所有する不動産を、できれば家族に残したいという希望があるとき弁護士法人リーガル東京では、親子間売買・夫婦間売買・買戻条件付セールス&リースバックなどの解決方法を、ご提案しています。このような方法で不動産を家族に残した方が数多くおります。
もっとも、物件状況や購入予定者の収入状況等により、希望に沿えない場合もあります。自己破産申立て後の売却ですと、破産管財人が買主を選びますので、家族が購入できる保証がありません。
(2)債務者が、所有する不動産から、引越したくないという希望があるとき弁護士法人リーガル東京では、セールス&リースバックという解決方法を、ご提案しています。自宅を売却しても、賃料を払って居住するという方法です。このような方法で住宅に家族とともに住むことができた方が、数多くおります。
もっとも、物件状況や購入予定者の収入状況等により、希望に沿えない場合もあります。自己破産申立て後の売却ですと、破産管財人が買主を選びますので、債務者本人や家族が居住できる保証がありません。
これに対し、無職無収入で、引越費用すらないという方は、自己破産申立て前に任意売却することはなく、競売手続に処分をゆだねることも一方法です。
Q.6 自己破産申立は、弁護士に頼んだ方が良いでしょうか。
A.6自己破産申立は、債務者本人でもできる建前になっています。
しかし、東京地方裁判所など、即日面接制度を採用している裁判所では、弁護士が代理人となって申し立てる場合でないと、事実上手続を進めてもらえません。
また申立書類の作成、裁判所や破産管財人(弁護士)との対応など、債務者一人では適切な対応ができない場合も多々あります。破産手続に手慣れた弁護士に依頼され、裁判所や破産管財人との連絡や面接時の同席などをしてもらえる方が、よいと思います。
なお、自己破産や民事再生(個人再生)は、この分野での経験豊富な弁護士に相談依頼するべきです。特に司法書士は、代理権限がなく書類作成をするだけですから、自己破産手続や個人再生手続を依頼することは、慎重にするべきです。
弁護士法人リーガル東京が、これまで手掛けた事案の中には、経験不足の弁護士や司法書士に依頼したが、うまくいかず当事務所に再度相談にきたケースが少なくありません。
例えば、
- 別の弁護士に自己破産を依頼したが、免責不許可となり、困って当事務所に相談にきた事案
- 司法書士に個人再生ができないからと自己破産を勧められたが、当事務所で個人再生した事案
- 別の弁護士に自己破産を勧められたが、当事務所でリースバックと 個人再生をした事案
- 司法書士に自己破産を依頼したが何年も放置され、当事務所に相談依頼したところ、多額の過払い金が判明し自己破産を止めた事案
などがあります。
弁護士法人リーガル東京は、数多くの多様な事案処理経験を踏まえ、不動産の債務問題にベストな解決を、ご提案できる自信があります。