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任意売却における夫婦間売買とは?ポイント・メリットをわかりやすく解説

夫婦間売買とは

金利が上昇したり、景気低迷が起こると多くの所で悪影響が出てきます。金利上昇は経済の先行指標としてはプラスに働くはずですが、先行指数と現実には乖離があるので、金利が上昇しても景気が向上しないということが多々起こるのです。

そうした悪影響の代表的な例として住宅ローンの滞納があります。変動金利で住宅ローンを組んでいた場合、金利が数パーセント上がると月々の負担額は数万円単位で上がってしまいます。さらに追い打ちをかけるように景気低迷による給与の減少や失業などが重なると、住宅ローンの継続的な返済は難しくなります。

こうした中で住宅ローンの滞納から立ち退きという最悪の流れも起きてくるのですが、子供の進学の理由や仕事の都合、または親の介護の事情など様々な事情により今住んでいる家を離れることは出来ないということもあります。

そうした時に弁護士などが提唱している方法として夫婦間売買というものがあります。これは通常の取り引きではありえないのですが、任意売却で売却する物件を夫婦間で売買しようというものです。

つまり夫名義から妻名義、妻名義から夫名義というように名義の変更を行うだけで任意売却後も同じ物件に住み続けるという方法です。
これは任意売却手続きに入った後でも行うことが可能で、住宅ローン滞納時に同じ物件に住み続けることが出来る最後の手段であると言えます。

任意売却とは抵当権が設定されている物件であっても金融機関の承諾があれば市場での売買が可能になるという制度で、半年ほどの制限期間が設けられている場合がほとんどですが、競売よりも有利な価格で決まることが多いため、債務者にとってメリットの多い手法です。しかし、子供の教育や親の介護など債務者の個人的な事情によっては、どうしても同じ物件に住み続けたいということも起こりえます。

夫婦間売買のメリットは?

住み続けることができる以外のメリット

当然メリットは立ち退きを行わなくても済むということですが、それ以外にもメリットが存在します。それは贈与税を回避出来るという点です。夫婦間の贈与の場合には居住用不動産の贈与の特例を利用することが出来ますが、これは婚姻20年以上という縛りがあるので、全てのご夫婦に利用できる制度ではありません。

しかし任意売却における夫婦間売買ならば、売買代金額が適正価格ならば、贈与税は発生しません。

相続対策となる

こうした非常に大きなメリットがありますが、さらに特殊な例ですがメリットになり得ることもあります。それは相続対策です。

相続には財産だけでなく負債も同時に引き継がなければならないという決まりがあるので、夫側が事業をしている場合には万が一のケースとして莫大な借金が残ることもあります。そうした時に不動産の名義が夫であるならば、不動産を相続する際に負債も同時に相続しなければならないので、最悪の場合不動産を手放さなければならないこともあります。しかし、事前に夫婦間売買を行い名義の変更を行っておけばこのようなトラブルを回避することが可能なのです。

これらはメリットの強調であって全てがこのようにうまくいく事は稀です。先程述べたとおり通常夫婦間であっても財産の移動を行うということは贈与税が発生します。しかし、夫婦間売買を行い贈与税が発生しないというのは、悪質な税逃れであると判断されるケースがあるのです。

その判断基準としては売買価格が適正であるかどうかが重視されます。つまり不動産の価格と実際の売買価格を照らしあわせ、極端な乖離がないと判断される必要があるのです。これによって万が一税逃れであると税務署に指摘されれば、適正価格から売買価格を差し引いた分だけ贈与税を新たにかけられることになります。これは任意売却前に想定していなければ突然の出費となりかなりの痛手となります。

このようにメリットも多い任意売却後の夫婦間売買ですが、十分注意して行わなければ後々大きなトラブルとなってしまいます。可能ならば弁護士など専門家のアドバイスを受けつつ適切な方法で行ってください。

夫婦間売買時のポイント

任意売却自体が専門性の高い手続きですが、夫婦間売却は更にその専門性が増します。任意売却を専門に扱っている業者の中にも、夫婦間の任意売却は無理と初めから取り合わないケースもあるようですが、それだけ乗り越えなけれはいけないハードルがいくつもあるということなのです。

売買資金の調達方法

第一に資金の調達方法です。
親や親族などの金銭的な援助がある場合が最も現実的です。そうした第三者からの資金援助によって、任意売却手続を後に夫婦間売買を行うと先程述べたとおり物件の所有者が移動するだけで同じ物件に住み続けるということが可能になるのです。
しかし、通常夫婦は家計を共にしているので住宅ローンを滞納しているという事は双方の経済状況が悪化していると考えるのが普通です。
住宅ローン残債を一括で返済できるということはあまりあり得ません。そのためほとんどの場合には現金で住宅の夫婦間売買の資金を用意できず、再び金融機関で住宅ローンの借入を行うことになります。
そうなると、夫婦間で任意売却をするために金融機関から融資を得る必要があります。しかし、夫婦間では、売買ではなく、贈与や相続という形で行われるのが通常であるため、金融機関は異例な案件には二の足を踏みます。

さらに、住宅ローンの債権者の同意ということも大きな問題になります。債権者の側からすると、今になって夫婦間で任意売却するということを知れば、そもそも住宅ローンを延滞している段階でどうにかすべきだったのではないかという考えを持っても当然です。
それなのに、競売による売却よりも高い金額で売却できる任意売却を夫婦間で行うというのですから納得できない部分が大きいのです。債務者の配偶者は、任意売却の買主として適格ではないと考えるのです。

適正な価格で売買する必要がある

また、夫婦間の不動産売買には融資しないという旨の規定もあるのです。これは、任意売却すると偽って金利の安い住宅ローンを利用したり、本来の目的とは異なる用途に利用されることなどを避けるための規定です。夫婦間などの売却ということになると、不当に高い価格で売買するケースや、逆に不当に低い価格で売買されることなどもあり得ます。

悪質な税逃れがないか税務署が調査に来ることがあります。その時に適正な売買価格であると証明出来なければ贈与税を逃れるためにそのような手法を使ったと考えられるので、大きなトラブルになります。

実績がある専門家に相談しよう

このように夫婦間での任意売却には、いくつもの困難があるので、任意売却の経験が豊富にあり、夫婦間による任意売却の実績がある専門家に依頼することが、夫婦間売却のポイントということになるのです。

任意売却の経験が豊富にあり、夫婦間による任意売却の実績がある専門家であれば、「今の家に住み続ける方法はありませんか?」「どうしてもこの家を手放したくない」という依頼者のために、それまでの経験を活かして夫婦間による任意売却をすることができます。

しかし、必ず自宅を残すことができると約束をすることはできる専門家はいないはずです。それだけ困難の多い手続きだからです。

そのように難しい夫婦間の任意売却において結果を出してきた経験と実績のある専門家に相談することが夫婦間の任意売却を成功させるポイントなのです。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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