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個人再生でやってはいけないことは?失敗した場合の対処法等も解説

個人再生は、裁判所の認可を受けて、法律に基づき借金を大幅に減額できる手続きです。
債務者は、減額できた借金を原則として3年間(場合により最長5年間)で分割返済することになります。
個人再生は債務整理に有効な手段の一つですが、手続きにあたっては、法律上・実務上の禁止行為や不利益となる行動がある点に注意しなければなりません。
今回は、個人再生の手続き中に避けるべき具体的な行為や注意点について、法律実務に基づいてわかりやすく解説します。

 

個人再生でやってはいけないこと

個人再生の手続き中にやってはいけないこととしては、以下のような行為が挙げられます。

・借金・浪費行為
・裁判所・弁護士への虚偽申告や虚偽の計画案作成
・財産の贈与
・再生計画案や書類の不備・提出遅れ
・履行テストの失敗
・税金・社会保険料の滞納
・一部の債権者への優先的返済
・収入が減る行為
・個人再生後の返済滞納
・自力での手続き申し立て
ここでは、上記の各行為について、詳しくご説明します。

借金・浪費行為

個人再生手続き中及び、認可後には、新たな借金や高額な買い物、ギャンブルなどの浪費行為は避けるべきです。
新たな借金や浪費を債権者などから裁判所へ通知された場合など、「生活再建の誠実な意思が認められない」と判断され、再生計画が認可されない可能性があります。
また、手続き中に作った借金によって返済負担が増大し、再生計画通りの履行(計画どおりに返済を続けること)ができなくなった場合には、認可後であっても計画が取り消される可能性があります。

裁判所・弁護士への虚偽申告や虚偽の計画案作成

個人再生では、所有している財産や収入状況などを正確に申告する義務があり、その内容は裁判所の判断材料となります。
また、これらの情報は、再生計画案(借金返済の計画)を作成する際の基礎資料となるため、虚偽の申告は重大な問題につながります。
たとえば、実際よりも収入を隠したり、支出を少なく記載したりといった虚偽の内容が裁判所に発覚した場合、問題となります。再生計画の履行(計画通りに返済を実行すること)が現実的でないと判断され、裁判所が認可しない可能性があります。
さらに、所有している財産を隠したり、財産の評価額を不当に低く見積もって申告するような行為が発覚した場合、手続き開始後でも再生手続きが認められないおそれがあります。
悪質なケースでは、民事再生法(債務整理のルールを定めた法律)に基づく詐欺再生罪(虚偽申告による刑事罰)に問われる可能性もあります。
そのため、裁判所だけでなく、弁護士に対しても虚偽の申告をすることは絶対に避けるべきです。
弁護士は依頼者の情報をもとに手続方針を立て、裁判所とやり取りを行います。誤った情報を伝えることで方針決定が狂い、手続きが混乱します。それだけでなく、信頼関係が損なわれ、弁護士から代理人を辞任されるおそれもあります。
申告や計画案作成の際は、事実に基づいた誠実な対応が何よりも重要です。

財産の贈与

個人再生では、一定の条件のもとで、財産を手元に残したまま手続きを進められる場合があります。
ただし、最低弁済額(個人再生で少なくとも返済しなければならない最低限の金額)は、法律で定められた基準額と、保有財産の清算価値(破産した場合に財産を処分して債権者に分配される見込み額)のいずれか高い方になります。
そのため、返済額を抑えようとして、所有財産を第三者に贈与(無償で譲り渡すこと)したり、名義変更(形式上のみ他人名義にすること)をしたりするケースがあります。しかし、このような行為は、財産隠しや不当な財産処分と判断される可能性があります。
財産隠しが発覚した場合、再生計画が不認可となったり、認可後でも取り消されたりする可能性があります。そのため、個人再生の申立て前後を問わず、財産の贈与や安易な名義変更は原則として避けるべきです。

再生計画案や書類の不備・提出遅れ

個人再生にあたっては、再生計画案をはじめとした複数の必要書類を裁判所へ提出する必要があります。
これらの書類は、事実に基づいて正確に記載し、定められた期限までに提出する必要があります。
書類に不備がある場合には、申立てが受理されない、または追加の修正指示を受ける場合があります。
また、裁判所の補正命令(書類の修正指示)を受けても書類の誤りを補正しない場合、申立てが却下されたり、手続きが終了したりする可能性があります。
さらに、各書類の提出期限も遵守することが重要です。再生計画案を提出期限までに提出しなかった場合、再生手続が廃止される可能性があります。

履行テストの失敗

個人再生の手続きでは、履行テストが行われます。
履行テストとは、再生計画どおりに返済を継続できるかどうかを試す制度です。
通常は3〜6ヶ月間、債務者が指定口座に毎月決まった額を振り込む形で行われます。
このテストに失敗すると、再生計画が認可されない可能性が高くなります。
履行テストをやり直すことは、原則として認められていません。

税金・社会保険料の滞納

個人再生の手続き中も、税金や社会保険料は滞納しないようにしましょう。
税金や社会保険料は、法律上、個人再生で減額の対象とならない「非減免債権(減らせない債務)」に分類されています。
このため、個人再生の手続き中であっても、これらの支払いは原則として継続しなければなりません。

税金や社会保険料の滞納があると、安定的な返済が困難とみなされ、再生計画が裁判所に認可されない可能性があります。

一部の債権者への優先的な返済

個人再生にあたって、一部の債権者へ優先的に返済を行うことは、「偏頗(へんぱ)弁済(特定の債権者だけを優先して返済すること)」とよばれ、原則として認められていません。
債権者平等の原則(すべての債権者を平等に扱うというルール)が適用されるためです。
親族や知人が相手であっても、特定の相手だけに先に返済する行為は問題となる可能性があります。
手続きの中で、裁判所は債務者の財産状況や金銭の流れを調査します。偏頗弁済を行った場合、取引履歴や通帳記録などの確認により、裁判所や再生委員(裁判所から選任され、手続きの調査や管理を行う第三者の専門家)に把握される可能性があります。
偏頗弁済が発覚した場合、その対象となった金額は、清算価値(破産した場合に債権者へどの程度、金銭を分配できるかの見積額)の算定に加えられます。
その結果、最低弁済額が本来よりも高額になるおそれがあります。
また、再生計画が認可されなかったり、内容の修正を求められたりする可能性があるため、注意しましょう。
ただし、住宅ローンなど、返済しなければ再生手続きに支障をきたす場合、一部弁済許可を裁判所に申し立てローン返済を継続することができます。

収入が減る行為

個人再生の手続き中には、退職や転職を行うこと自体が直ちに禁止されているわけではありません。
ただし、収入が現在よりも減ってしまう行為は、再生計画への影響が出る可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

収入が減ると、再生計画に沿った返済が難しいと判断され、裁判所が再生計画を認可しない可能性があります。
転職によって収入が維持される場合でも、雇用形態や収入の継続性が不安定とみなされると、認可されない可能性があります。

個人再生後の返済滞納

再生計画が裁判所に認可された後には、減額された借金を分割で返済していくことになります。
この返済は、再生計画で定められたとおり、継続して行う必要があります。
返済の遅れや未払いが続いた場合には、再生計画の認可が取り消される可能性があります。
その結果、再生計画によって得られていた借金の減額が無効となり、元の借金額に戻ってしまうおそれがあります。
個人再生認可後に返済滞納が生じた場合、弁護士に相談し、再度の再生手続き申し立てや自己破産申し立てを検討することが重要です。

自力での手続き申し立て

個人再生の手続きでは、再生計画案の策定や裁判所に提出する複数の書類の用意など、多くの手続きが必要になります。
それだけでなく、債権者との意見調整・交渉も発生する場合があります。
これらの手続きを債務者が自ら行うことは、知識・経験がない為、難易度が高くなりお勧めできません。
個人再生手続は、弁護士に依頼することで、手続きを円滑に進めやすくなります。
特に弁護士は、裁判所とのやり取りや代理人としての対応も可能なため、債務者の負担が軽減されることがあります。
ただし、弁護士に依頼する場合には、費用がかかります。
裁判所に支払う予納金(裁判所での話し合いや審査手続にかかる前払い費用)も含めて、必要な資金は事前に確認しておく必要があります。
そのうえで、個人再生の申立てや弁護士への依頼を検討する際には、無理のない支払い計画や費用負担の見通しを立てることが大切です。

個人再生でやってはいけないことを行うとどうなる?

前述のような「やってはいけないこと」を行うと、再生計画が裁判所に認可されなかったり、認可後に取り消されたりするおそれがあります。
その場合、借金は減額されず、場合によっては利息や遅延損害金が加算されて借金が増えたり、債権者から一括返済を求められたりするリスクもあります。

また、手続きにかかる予納金は返金されず、費用面でも損失が生じる可能性があります。

さらに、個人再生に失敗したとしても、事故情報は信用情報機関に登録されるため、ローンやクレジットカードの利用が難しくなるおそれもあります。

仮に、自身で個人再生手続きを行う場合、知識・経験がない為、難易度が高くなります。
まずは、経験豊富な弁護士に相談し依頼をすることをお勧めいたします。

個人再生が失敗した場合の対処法

個人再生に失敗した場合には、以下のような方法での対処を検討します。

即時抗告を行う

即時抗告とは、裁判所の決定に不服がある場合に、上級裁判所に対して判断の見直しを求める不服申立ての手続きのことをいいます。
個人再生においては、提出した再生計画案が裁判所によって「不認可」とされた場合などに、債務者が即時抗告を申し立てることができます。
即時抗告の期限は、原則として官報に掲載された公告の日から起算して15日以内(=公告の日の翌日に発生する効力発生日から2週間以内)です(民事再生法第9条、第10条)。
この手続きは、再生計画の認可・不認可といった裁判所の判断に対して不服を申し立てるための制度です。
しかし、制度としてありますが、即時抗告をしても結果が変わることはほとんどありません。

再び個人再生を申し立てる

一方で、「再び個人再生を申し立てる」というのは、再生手続がすでに終了した後に、前回の手続で生じた課題を踏まえて、改めて個人再生を申し立てる方法です。
たとえば、履行テストの失敗、債権者の不同意、認可後の返済滞納によって、再生計画が廃止または不認可または取り消しとなる場合です。
再度の申立てを行う場合は、収入状況や支出内容を再検討し、現実的かつ返済可能な再生計画案を作成することが重要です。
ただし、再度の個人再生では、前回の履行状況などを踏まえて、裁判所の審査がより厳しくなる可能性があります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
このうち「給与所得者等再生」については、民事再生法第241条第3項により、原則として一度認可を受けてから7年間は再度の申立てができません。

再生計画案を変更する

認可後の返済が、病気やケガなどのやむを得ない事情で困難になった場合には、裁判所の許可を得て再生計画を変更することができます。
この変更により、返済期間を原則の期間に加えて最長2年まで延長することが可能です。
ただし、新たな借入れや浪費など、自己の責任による事情は、原則として変更理由として認められません。

ハードシップ免責を利用する

また、ハードシップ免責(民事再生法第235条)を利用することもできます。ハードシップ免責とは、やむを得ない事情で返済を続けられなくなった場合に、残りの返済について免責を受けられる制度のことをいいます。
ハードシップ免責を利用できるのは、すでに計画に基づく返済額の4分の3以上を支払っていることが前提です。
さらに、やむを得ない事情により残額の支払いが困難であるなど、法定要件をすべて満たしている場合に限り、残りの返済について免責が認められる可能性があります。

自己破産を行う

自己破産は、支払い能力がなくなった債務者が裁判所を通じて借金の免責を受けるための法的手続きです。
個人再生に失敗した場合には、自己破産に手続きを切り替えることも対処法の一つです。
自己破産が認められた場合、原則として抱えている借金の支払義務は免責されます。これは、法的に支払い義務がなくなることを意味します。
ただし、99万円以下の現金や家財道具など、最低限の生活に必要な財産を除き、それ以外の財産は処分の対象となります。
また、信用情報機関に事故情報が登録されるほか、一部の職業・資格については、破産手続中に制限を受ける場合があります。
自己破産にはメリットとデメリットがあるため、それぞれの影響を正しく理解した上で、手続きを選択することが重要です。

個人再生は弁護士に依頼するのが成功の近道

個人再生は、手続きを正確に進めることで大きな減額効果を得られる制度ですが、その反面、一定のルールや制限を守らなければ、手続きが失敗に終わるおそれもあります。
個人再生の手続きは、法律的な判断や複雑な書類作成が必要となるため、経験豊富な弁護士に依頼することが望ましいとされています。
個人再生の豊富な実績を持つ弁護士が代理で手続きを行い、再生計画案の策定をサポートすることで、個人再生の認可決定を得られる可能性が高まります。
債務者自身も、精神的・事務的な負担を軽減しつつ、より安心して手続きを進めることができます。
弁護士を選ぶ際は、費用だけでなく、過去の対応実績や人柄なども考慮し、自分に合った専門家を見極めることが重要です。

まとめ

個人再生には、複数の「やってはいけないこと」があります。「やってはいけないこと」を避けることが、個人再生成功のために極めて重要です。そのためには、債務整理に精通した弁護士のサポートを受け、慎重かつ正確に手続きを進めるようにしましょう。

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監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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