個人再生で官報に掲載されると周囲に知られる?弁護士に相談するメリット等を解説
個人再生とは、裁判所が関与して、借金を抱えた人(債務者)について「この金額なら返済できる」作成した計画を審査し、適法だと認めた場合に、借金の一部を減額して分割返済する法的手続きです。
個人再生は、主に住宅ローンを含む借金の返済が難しくなった人が利用できる制度です。
ただし、個人再生を進めると、複数回官報に情報が掲載されます。
そこで今回は、個人再生の官報掲載による影響について、わかりやすく解説していきます。
【関連記事】個人再生とは?手続きの流れや任意整理・自己破産との違い等も解説
官報とは
官報とは、国の法令や公示事項を国民に広く知らせるための公報誌です。
編集や発行は国立印刷局によって行われており、各都道府県の官報販売所で販売され、インターネットでも公開されています。
官報には本紙と号外があります。このうちの本紙は行政機関の休日を除く平日に発行されています。一方の号外は、緊急の情報がある場合などに臨時的に発行されます。
官報に掲載される情報には、次のようなものがあります。
・法律・政令・条約
・国会関連事項
・叙位・叙勲・褒章
・各省庁の人事異動
・司法試験の合格者
・裁判所からの告知
・公共事業の競争入札
・会社の解散・合併公告 など
また、インターネットでは、過去の官報の情報についても検索・閲覧することが可能です。
個人再生で官報に掲載される内容
個人再生の開始決定後は、「裁判所からの告知」の一種として、申立人(再生債務者)の情報が官報に掲載されます。これは民事再生法第242条などを根拠に行われるもので、個人再生開始後は、必ず掲載されます。
個人再生にあたって、官報に掲載される具体的な情報は、以下のようなものです。
・再生債務者の住所・氏名
・個人再生開始決定の日付
・再生債権の届出期間
・一般異議申述期間
・再生計画案の提出期限
・管轄の地方裁判所名
「再生債権の届出期間」とは、お金を貸している債権者が、「この人に○○円の債権があります。」と裁判所に申し出るための期間のことをいいます。
また、「一般異議申述期間」は、再生債務者が、その債務の金額が間違っているときに、正しい債務額を裁判所に申告する期間です。
個人再生で官報に載ると周囲にバレる?
個人再生を選択した場合、官報に情報(債務者の住所・氏名)が掲載されることで、家族や職場の人にバレる可能性が無いわけではありません。
官報を主に読むのは、弁護士や司法書士のほか、金融関連企業や信用情報機関の職員、自治体の税務担当者などです。また、官報はインターネットで無料公開されていますが、一般の人が日常的に閲覧することはほとんどありません。
そのため、官報に掲載されたからといって、必ずしも周囲にバレるとは限りません。ただし、官報の情報をもとにダイレクトメール(DM)が届いたり、官報情報を公開する民間サイトなどから家族・勤務先にバレる可能性もあります。
個人再生で官報に掲載されるタイミング
個人再生を行ったことが官報に掲載されるタイミングは、以下の3つの段階です。
➀裁判所が個人再生手続きの開始を決定した時
②再生計画(減額後の借金をどのように返済するかの計画)について審査が行われる時
・小規模個人再生(主に会社員や自営業者向けの手続き)の場合: 債権者が書面で計画に賛成か反対かを表明するとき(書面決議)
・給与所得者等再生(給与が安定している人向けの手続き)の場合: 裁判所が債権者の意見を聞くとき(意見聴取)
➂裁判所が再生計画を認めた時(認可決定)
個人再生では、手続きの開始時、再生計画案に関する審査時、計画の認可時の計3回、官報に情報が掲載されます。
個人再生で官報に掲載されるデメリット
個人再生によって官報に自身の情報が掲載されることには、以下のデメリットがあります。
・官報公告費を負担しなければならない
・今後のローン審査に通りにくくなる
・違法業者からアプローチを受ける可能性がある
・民間サイトに情報が掲載される場合がある
4つのデメリットについて詳しくみていきましょう。
官報公告費を負担しなければならない
個人再生を申し立てる際には、官報公告費を債務者が負担し、裁判所に支払わなければなりません。その金額は13,744円~14,000円です(2024年5月現在、東京地方裁判所の資料より)。
費用負担があるという点は、官報に情報が掲載されるデメリットの1つです。
今後のローン審査に通りにくくなる
ローンやクレジットカードの審査に関わる信用情報機関は、官報の情報を確認し、事故情報として登録することがあります。
登録された情報は、その後の審査に影響を与える可能性があります。
そのため、個人再生をした事実が官報に載ることで、事故情報が残る5~7年の間は、ローンやクレジットカードの審査には通らないと考えてよいでしょう。
違法業者からアプローチを受ける可能性がある
既にご説明したとおり、個人再生を行うと、官報に住所と氏名が掲載されます。すると、その情報をもとに、闇金などの違法業者からダイレクトメールが送られることがあります。
違法業者は、ローンやクレジットカードの審査に通りにくい再生債務者を狙い、高金利でお金を貸そうとします。「すぐにお金を借りられるから」と、違法業者の誘いに乗らないよう気をつけましょう。
民間サイトに情報が掲載される場合がある
民間の情報サイトに、官報に掲載された内容が転載されることがあります。官報は誰でも閲覧可能な「公的情報」であるため、民間企業やウェブサイトがこの情報を収集・転載すること自体は、法的に禁止されていません。
なかには、債務整理に関する情報を集めて、誰でも見られるようにしている民間のサイトもあります。こうしたサイトでは、名前や住んでいる地域を入力すると、個人再生をした人の情報が表示されることがあります。
民間サイトに掲載された情報については、サイト運営者に対して削除を依頼できる場合もあります。ただし、これに応じる法的義務はないため、必ずしも情報が削除されるとは限りません。
個人再生で官報に掲載された情報はいつまで閲覧可能?
次に、個人再生の際に官報に掲載された情報がいつまで公表され、閲覧可能な状態にあるのかを確認していきましょう。
そもそも、官報を閲覧できる媒体は、「紙版」「インターネット版」「官報情報検索サービス」の3種類に分かれます。それぞれの媒体における情報閲覧可能期間は以下のとおりです。
・紙版:発行当日のみ
・インターネット版:直近90日分(無料)
・官報情報検索サービス:昭和22年5月3日以降の全ての官報を閲覧可能(有料)
官報情報検索サービスは有料のため、一般の人が利用するケースは少ないでしょう。
また、国や自治体が運営する図書館では、紙版の官報を数年分にわたって保管しているケースもあります。
任意整理なら官報に掲載されない
債務整理には複数の方法がありますが、その代表的なものとして挙げられるのが、個人再生や自己破産(借金を全額免責する制度で、財産の処分が必要)、任意整理(裁判所を通さず、債権者と交渉して返済計画を見直す手続き)です。
このうちの個人再生と自己破産は裁判所を通す手続きであり、手続きが開始された場合には、債務者の情報は官報に掲載されてしまいます。
任意整理は、裁判所を通さずに行うため、官報には掲載されません。手続き後、債務者は3年~5年程度での完済を目指します。
任意整理は、多くの場合、弁護士や司法書士が交渉を請け負います。個人再生や自己破産に比べ借金の減額幅は小さいものの、官報への掲載を避けられるという特徴があります。
しかし、信用情報には掲載され、ローンなどの審査が通らなくなります。
ただし、任意整理が適しているかどうかは、借金の状況や資産収入状況によって異なります。自分にとって最適な方法を知るためにも、一度弁護士に相談してみましょう。
個人再生を考える際に弁護士に相談するメリット
個人再生を検討している場合、まずは借金問題を扱う弁護士に相談することをお勧めします。 弁護士のサポートを受けることで、以下のメリットがあります。
・最適な債務整理の方法についてアドバイスを受けられる
・弁護士に依頼すると、取り立てや催促が止まる
・手続きの負担を軽減できる
弁護士は債務整理に精通しており、一人ひとりの状況やニーズに応じて最適な方法を提案できます。個人で判断するよりも、より良い解決策を見つけられる点が弁護士に相談する利点です。
また、弁護士に依頼すると、債権者(お金を貸している会社や銀行)に「この借金問題は弁護士が対応する」と通知されます。この通知を受けると、貸金業法により、債権者は債務者本人への取り立てや催促をしてはいけなくなります。つまり、弁護士に依頼することで、取り立てを止めることができるのです。
さらに、債務整理に関するさまざまな手続きを弁護士がサポートしてくれるため、債務者の負担が軽減されます。
弁護士法人リーガル東京では個人再生法が施行された、2001年4月1日から20年以上に渡って、数百件もの個人再生申し立てを行い、債務問題を解決しています。
豊富な経験と知識がありますので、是非ともご相談ください。
まとめ
個人再生は、借金問題の解決に有効な手段です。ただし、個人再生を進めるにあたっては、官報に情報が掲載されることとそのデメリットについてよく理解しておく必要があります。
官報は一般の人が日常的に読むものではありませんが、掲載される情報は誰でも閲覧可能です。そのため、家族や勤務先の人などに知られる可能性はゼロではありません。
官報への掲載が気になる場合は、弁護士に相談し、状況に合った方法を検討することが大切です。
弁護士法人リーガル東京では、債務整理に関するご相談を受け付けています。豊富な実績を持つ弁護士が、税理士やフィナンシャルプランナーと連携し、一人ひとりに最適な方法を提案します。
債務に関するご相談は、何回でも無料です。借金の返済にお困りの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
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