個人再生とは?手続きの流れや任意整理・自己破産との違い等も解説
「個人再生」は、債務整理の手段のひとつです。
弊所でも、借金に苦しんでいる方が相談に来られた際には、その状況によっては、個人再生を提案することがあります。
しかし、個人再生については、詳しく知らないという方が多いです。「個人再生とはどういう意味ですか」「個人再生とは何ですか」と質問されることも、少なくはありません。
そこで今回は、個人再生について、その概要や適用条件、メリット・デメリット、手続き方法などをわかりやすく解説します。
他の手続きとの違いについてもご説明するので、ぜひ参考にしてください。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所を通して借金などの借金(債務)を減額してもらう手続きです。
これは、返済が困難だと認定された場合に、一定の条件を満たすことで利用できるものです。手続きが認められれば、債務者が抱える借金(債務)は法律で定められた基準に従い減額されます。
また、残りの借金(残債)については、債務者は支払い義務を負うことになり、原則3年(最長5年)で返済しなければなりません。
個人再生は、任意整理や自己破産と並ぶ方法として、債務整理に用いられています。
個人再生ができる条件
個人再生を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。その主な条件は以下の2つです。
・安定した収入(アルバイト収入でも可能)があり、個人再生後の計画的な弁済が可能であること
・借金(無担保債務)の総額が5,000万円以下(住宅ローンや特定の共益債権、担保付き債権を除く)であること
個人再生は、安定した収入があるものの、このままでは借金(無担保債務)を返済が滞るという場合に利用できる手続きです。
再生手続きで定められた返済額を確実に返済できる収入があれば正社員で無くても個人再生を利用することが可能です。
個人再生ができないケース
個人再生の手続きは、以下のようなケースでは利用できません。
■安定した収入がなく、借金(無担保債務)を減額されても返済の見込みが立たない場合
■借金(無担保債務)の総額が5,000万円を超えている場合(住宅ローンや特定の共益債権、担保付き債権を除く)
■直近10年以内に、以下のいずれかの決定を受けている場合
・個人再生のハードシップ免責許可決定(返済が困難な場合に例外的に残りの債務を免除する決定)
・給与所得者再生の再生計画認可決定(安定した給与収入のある人が利用できる個人再生の一種で、裁判所が再生計画を認める決定)
・破産手続免責決定(自己破産をした際に、裁判所が借金の返済義務を免除する決定)
■清算価値保障原則(債務者が保有する資産額相当を弁済しなければならない原則)により、再生計画の認可が困難な場合
※清算価値保障原則とは、債務者が自己破産した際に資産を換金して配当に回すべき金額を計算して再生計画で払うべき金額を指します。
■債権者から再生反対の異議が場合
・債権者の過半数か債権額の過半額が異議を出した場合(裁判所が再生計画を認めない)
上記、再生反対の異議が出るのは、小規模再生手続きを選んだ場合であり、そのような事が予想されるケースでは、給与所得者再生を選ぶことをお勧めします。
個人再生は、大幅に減額はされるものの、借金の一部の支払い義務が残る方法です。そのため、手続き後の弁済が困難であると予想される場合には、利用することができません。
個人再生のメリット・デメリット
個人再生を検討する際には、そのメリットとデメリットを正しく把握しておくことが大切です。
個人再生のメリット
個人再生には、以下のメリットが期待できます。
・借金を最大で5分の1まで減額できる ※最低弁済額の規定や清算価値保障原則により異なります。
・債権者による督促がストップする
・借金の原因に関係なく申し立てることができる
・住宅ローン特則を利用すれば、一定の条件を満たすことでマイホームを残せる
・ギャンブルや投資、浪費によって債務を負った場合でも個人再生を利用できる。
また、手続きの過程では弁護士を通じて受任通知を債権者に送るため、通知を受け取った債権者は直接督促できなくなります。これにより、債務者の精神的負担が軽減されます。
個人再生のデメリット
個人再生には、メリットばかりではなく、以下のデメリットがある点に注意する必要があります。
・手続きを完了するまでに時間がかかる
・手続き費用がかかる
・信用情報に個人再生の記録が登録される
・官報に個人再生を行った事実が掲載される
個人再生には、準備に2ヶ月~6ヶ月位かかり、申し立て・認可に至るまでが、約6ヶ月かかります。それには、複数の手続きが必要で、全て完了するには8ヶ月~1年程度かかります。
また、裁判所や弁護士に支払う費用も発生します。
それに加え、信用情報に個人再生の記録が登録されるため、一定期間はローンやクレジットカードの利用が制限されることもデメリットといえます。
個人再生を行うと勤務先にバレる?
個人再生については、「勤務先に知られるのではないか」という点が心配な方もいるでしょう。
結論から述べると、個人再生を行ったことが勤務先に知られることは通常ありません。個人再生には、自己破産時に適用される職業制限がなく、会社を巻き込む手続きもないためです。
ただし、例外的に知られる可能性があるケースもあります。
例えば、会社に対して借金をしている場合、債権者として個人再生の通知を受けるため、勤務先に知られることになります。
また、給与が差し押さえられている場合、裁判所を通じて差し押さえを解除する手続きが必要になり、その過程で勤務先に知られる可能性があります。
個人再生の手続きの種類
個人再生の手続きは、「小規模個人再生手続」 と 「給与所得者等再生手続」 の2種類に分類されます。
小規模個人再生手続
小規模個人再生手続は、継続的な収入の見込みがある個人を対象とした手続きです。自営業者やサラリーマン、アルバイトなど、職業を問わず利用できます。
利用するための条件は以下の通りです。
・継続的な収入の見込みがあること
・借金総額が住宅ローンを除き5,000万円以下であること
給与所得者等再生手続
給与所得者等再生手続は、安定した給与収入がある個人を対象とした手続きです。小規模個人再生手続の要件を満たしていても、給与所得者等再生手続を選択することができます。
給与所得者等再生手続では、小規模個人再生手続の条件に加えて、以下の要件が追加されます。
・将来にわたって定期的かつ安定した収入が見込まれること
・支払い義務の残る弁済総額が「可処分所得の2年分以上」でなければならないこと
このため、給与所得者等再生手続では、小規模個人再生手続よりも弁済額が多くなる可能性があります。
どちらの手続きを選択するかは、状況を踏まえて慎重に判断することが重要です。
個人再生の手続きの流れ
個人再生の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。
➀弁護士への相談・依頼(数日〜1週間程度)
②弁護士が受任通知の送付(即日〜数日以内)※これにより督促や返済が一時停止されます。
➂個人再生申立ての準備(約2〜4週間)※債権調査や必要書類の収集などを行います。
➂の個人再生申立て後の標準的なスケジュールは、東京地方裁判所の例では以下のとおりです。
手続(説明付き) | 個人再生の申立て日からの日数 | 開始決定日からの日数(※裁判所が手続開始を決めた日) |
個人再生委員選任(裁判所が手続きをサポートする専門家を選ぶ) | 0日 | |
手続開始に関する個人再生委員の意見書提出(個人再生委員が、手続を開始すべきか裁判所に報告) | 3週間 | |
開始決定(裁判所が手続の正式な開始を決定) | 4週間 | 0日 |
債権届出期限(債権者が「いくら貸しているか」を申告) | 8週間 | 4週間 |
債権認否一覧表・報告書の提出期限(債務者が内容を認めるか一覧にして報告) | 10週間 | 6週間 |
一般異議申述期間の開始(債権者が異議を申し立てられる期間の開始) | 10週間 | 6週間 |
一般異議申述期間の終了(異議を申し立てられる期間の終了) | 13週間 | 9週間 |
評価申立期限(債務者が債権内容に不服がある場合の申し立て期限) | 16週間 | 12週間 |
再生計画案提出期限(どのように借金を返していくかの返済プランを裁判所に提出) | 18週間 | 14週間 |
書面決議または意見聴取に関する委員の意見書提出(返済プランについて債権者の意見を聞く方法に関して委員が意見を提出) | 20週間 | 16週間 |
書面決議・意見聴取の決定(返済プランを債権者に賛成・反対してもらう方法を裁判所が決定) | 20週間 | 16週間 |
回答書提出期限(債権者が返済プランに賛成・反対を表明する期限) | 22週間 | 18週間 |
認可の可否に関する委員の意見書提出(再生計画を認めてよいかどうか、委員が裁判所に意見を提出) | 24週間 | 20週間 |
再生計画の認可・不認可決定(裁判所が返済プランを最終的に認めるかどうかを決定) | 25週間 | 21週間 |
※東京地裁以外は、個人再生委員が選任されないこともあります。
このように、個人再生の手続きには複数の段階があります。中には専門的な手続きもあるため、個人再生をスムーズに進めるためには、弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。
また、受任通知送付後には借金の督促や返済は停止されますが、債務者はこのタイミングで積立を始めることが推奨されます。個人再生後の返済や裁判所への予納金・弁護士費用の支払いに備えるためです。
個人再生の手続きにかかる費用
既にご紹介したとおり、個人再生の手続きを行うには、裁判所へ支払う費用と弁護士費用が必要です。その一般的な相場を確認していきましょう。
・裁判所へ支払う費用の相場:5万円程度(再生委員を選任する場合は追加で15万円〜25万円程度)
・弁護士費用の相場:40万〜70万円前後 ※消費税別
※ただし、住宅資金特別条項を利用する場合は70万~80万円程度 ※消費税別
ただし、上記はあくまで相場であり、実際にかかる金額はケースバイケースです。「手続きにいくらかかるか」は、弁護士への相談時に必ず確認しておくようにしましょう。
住宅ローン特例のメリットと清算価値保証原則の注意点
住宅ローン特例を利用すると、マイホームを手放さずに個人再生を行うことができます。
住宅ローン特例は、住宅ローンを支払いながらマイホームを残せる制度です。
ただし、「清算価値保証原則」に注意が必要です。
「清算価値保証原則」とは、借金を減額できても、持っている財産(=清算価値)より少ない金額には減額できないというルールです。
例えば、住宅ローンを除く、総再生債務が500万円あるとします。
この場合、通常100万円に減額できますが、清算価値保障原則で持っている財産が200万円の場合200万円が返済額となります。
住宅ローン特例を適用すれば、マイホームを手元に残すことはできます。しかし、そのマイホームの清算価値(売却した場合の価値)が高いと、その分返済しなければならない金額が増える可能性があります。
つまり、住宅ローン特例はマイホームを手放さなくて済むメリットはあるものの、財産の評価額によっては返済額が増えることもあるため、事前にしっかり確認することが大切なのです。
個人再生と他の手続きの違い
債務整理では、個人再生の他にも、「任意整理」や「自己破産」の手続きが取られることがあります。最適な方法を選択するためにも、ここでは任意整理・自己破産と個人再生の違いについて確認しておきましょう。
個人再生と任意整理の違い
任意整理とは、裁判所を通さず、利息のカットや長期分割での支払いを債権者との話し合いで交渉し、借金の支払い負担の軽減を目指す方法です。個人再生と異なり、元本(借金の元の額)が減額されることは基本的にありませんが、将来の利息や遅延損害金がカットされることが一般的です。
また、交渉を行う債権者は債務者側で選択することができます。
個人再生と自己破産の違い
自己破産とは、裁判所を通して借金の返済を全額免責してもらう手続きのことです。個人再生と異なり、自己破産では、原則として借金の支払い義務がなくなります。
ただし、自己破産をした場合には、生活に必要な一部を除き、住宅をはじめとする債務者の財産は処分されてしまいます。
また、自己破産には一定の職業制限があり、弁護士・公認会計士などの士業や警備員など、一部の職業は破産手続き中は資格や登録が取り消されたり、業務ができなくなったりします。 ただし、免責が確定すれば制限は解除されます。
まとめ
個人再生は、借金を大幅に減額できる手段です。多額の借金で苦しんでいる場合、個人再生を利用すれば、原則として住宅ローンなどを除く借金の支払い義務は残るものの、その負担は大幅に軽減されるでしょう。
ただし、個人再生には一定の条件があり、時間や費用もかかります。制度の利用については、任意整理や自己破産など他の手段も含め、慎重に検討することが大切です。
最適な手段を取るためには、弁護士に相談するのも良いでしょう。
弁護士法人リーガル東京では、債務整理に関するご相談を受け付けています。
市民に身近な弁護士として、ご相談者様に最適な解決策を提案し、明朗な費用で手続きをサポートいたします。
また、マイホームのリースバックなど、不動産に関する問題もご相談ください。
弊所では、税理士や不動産仲介会社と連携することで、スムーズな対応が可能です。
どなた様も、まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
-コメント-
弁護士法人リーガル東京は弁護士・税理士などの専門家集団です。当法律事務所に相談依頼するだけで、購入先紹介・売買契約締結交渉・残債務整理・登記手続・税務申告のワンストップサービスを比較的低額の料金でご提供致します。
この記事を見ている人はこんな記事も見ています
最近の投稿