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任意売却物件を購入時の注意点とメリット・デメリット

任意売却物件の購入で気をつけること

任意売却物件の購入時の注意点

任意売却とは、家を売りたい人が直接不動産を販売する方法です。不動産業者も中には入りますが、購入者は普通に住宅を購入するように、お客様としてサービスを受けるというわけにはいきません。相手は営利目的で対応をしてくれるお店ではなく、やむを得ず家を手放すこととなった人であるからです。

家を売却するお金は、家の所有者の今後の計画に既に組み込まれています。そのお金でローンを返済したりという事情がありますが、値引き交渉は行えない訳ではありません。

任意売却物件の購入では、相手とのやり取りが何より大切なのです。やり取りの末売主が家を売る、手放すという許可をしてくれなければ、買う側であっても家を手に入れることができません。お金を出す側であっても、ある意味では立場は対等なのです。

業者を利用して不動産を購入するときは、引越しのタイミングから何から、買主で決めることができます。しかし任意売却物件に対しては、自分の都合を押し通すことができません。相手がいる、商売ではない物件購入。その意味を考えて行動する必要があります。

通常の不動産物件購入との違い

任意売却で購入した物件の、普通の不動産物件と違うところは、売り主に瑕疵担保責任がつかないということにあります。

瑕疵担保責任というのは物件購入後もしその家や土地に欠陥が見つかった場合に、売り主が責任をもってそれを排除する、最低限の生活をしていくために必要な修理等が、売り主の負担で行われるシステムのことです。住まなければ気付けない生活の上での支障を、売主が故意に隠して売却したと考えられるため、購入者は損害に対する賠償を要求できます。瑕疵担保責任が存在することにより、見えないところにも一定の品質が保証され、購入者は安心して物件の購入ができます。

しかし売主が債務者となる任意売却の物件には、瑕疵担保の責任が原則存在しません。つまり後から物件に欠陥が見つかっても、自力で取り除くしか方法がないことになります。契約違反だとして、破棄を申し入れることも不可能です。

瑕疵担保責任が発生しないがゆえのトラブルを防ぐためには、購入前によく状態をチェックして、問題が起こらないか気を付けて調べてみるより他ありません。設備が正常に作動するかしっかりと確認をし、可能であれば売主から状況確認の書類などをもらい、物件の状態を十分に把握したうえで購入に臨むことが必須です。

任意売却という手段を通じて購入できる物件は、明確には商品ではありません。同様に前の所有者が存在している中古物件が、不動産業者の確かな商品となるのに対し、任意売却物件に関しては不動産会社は基本的に仲介するだけです。不動産会社のスタンスが違うので、物件の購入もあらゆる意味で異なった面が見えてきます。

不動産業者が売主の場合、中古物件は不完全な状態では滅多に売却されません。欠陥があれば直され、設備の古いものは新しく交換され、元住民がいた痕跡などは見える範囲も見えない範囲も含めて排除されます。ハウスクリーニングが行われて、物件が新品同様の状態にあることも多いです。中古らしい中古物件は、購入者に忌避されてしまうからというのが理由です。物件を売るために、販売する側の人間はできることをします。

しかし任意売却を行う売主は、多くの場合そういった状態の質を高める工夫をする余裕を持っていません。時間的にも金銭的にももはやかけるものがないという状態で、とりあえずローンを返済する目的を満たすため物件を売ります。

結果物件は直前まで人が住んでいた、そのままの姿で受け渡されることにもなります。設備以前に、前の持ち主の荷物が残ることも珍しくありません。商品として整えられた状態での物件購入は、そもそもできないと思っておく方が無難です。

任意売却物件の購入時のメリットとデメリット

日本人のライフスタイルは大きく変わり、今ではその価値観も多様化しています。そんな中で住宅も新築を購入するというよくあるマイホームのスタイルではなく、中古住宅を割安な価格で購入しリノベーションで好きな様式に創り変えるという方法も増えてきました。

そうした中で市場価格よりも割安な価格で物件を購入できると注目されているのが、任意売却物件です。これは住宅ローンの滞納などで競売にかけられる前に、半年ほどの猶予期間を得て市場で販売されている物件です。

購入時のメリット

競売になるとさらに価格が下がってしまうため、物件の所有者も半年の間で処分出来るように割安な価格を打ち出していることが多く、購入者にとってはメリットの大きいものになります。しかし、通常の中古物件とは違い任意売却物件にはいくつか事前に覚悟しておくべきデメリットも存在します。

購入時のデメリット

まずデメリットとして挙げられるのが債権者との交渉です。厳密には物件の所有者は住人ではなく、住宅ローンの債権を持つ金融機関です。そのため最終的な販売価格は真の所有者たる金融機関の承諾が必須となります。

次にデメリットとして多く報告されるものが瑕疵担保責任の有無です。瑕疵担保責任とは中古住宅の売買の際に、住宅の破損や欠陥など買主の気づかないレベルで存在していた場合、その損害賠償を請求できるというものです。

この瑕疵担保責任は場合によっては契約破棄も可能なほど強く買主の権利を守るものですが、任意売却物件の場合には瑕疵担保責任を認めるケースが多いため物件を購入後に何か欠陥や重大な問題が見つかったとしても、買主が自費でその負担をカバーする必要があるのです。これは住宅の購入など高額な買い物ではかなりリスキーな選択であると言えるので、任意売却物件をためらう大きなデメリットとなります。

また通常の市場取引では最低基準価格も最高限度額も存在せず、購入者と売却者の交渉次第で価格は自由に揺れ動きます。しかし、任意売却の場合には債権者である金融機関が定めた基本売買額以下での交渉は出来ないので、交渉により価格を下げるという通常の物件取り引きのような考え方はあまり適用できないということになります。

また普通の中古物件では考えられないことですが、任意売却物件では引き渡し期限や取り引きの期間などが厳密で非常にハードなため、全居住者の残置物がある場合があります。これらの処理も新たな居住者である買主が行うことになりますが、処分方法などしっかりと確認しておかなければ後々大きなトラブルにも繋がります。

その他にも細かな点でのデメリットも多々あります。任意売却物件の場合ほとんどのケースで補修など通常の中古物件のレベルでは行われていません。普通は物件の価値を高めるために基本的なリフォームや補修などが完了した物件が多いのですが、当然住宅ローンを滞納しているという前提のため、そのような完璧な整備は期待できません。

また個々のケースにかなり依存しますが、任意売却物件の場合売主は少しでも住宅ローンの残高を減らすべく有利な立場での交渉を狙います。そのため通常の市場価格と同程度で物件の売値を提示されることもあるのですが、それならば始めからリスクの高い任意売却物件を購入する必要はありません。そのためお互いに譲歩と意見の提示を繰り返しながら粘り強く交渉を進めていくということになるのですが、かなり人間性の現れる所なので、負担に思われる方は通常の中古物件を選ぶほうがデメリットを回避出来る方法であると言えます。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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