リースバックでオフバランスはできる?メリット・デメリットを解説
「オフバランス」とは、企業が特定の資産や負債を会計上で表に出さず、財務諸表に記載しない手法のことを指します。この手法を活用することで、企業は財務状況を改善する一方で、外部から見た財務の透明性(企業の財務状況が正確に把握できる状態)が損なわれるリスクが伴うため、メリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。
たとえば、不動産を売却してリースバックを行うことで、所有資産を減らしつつ現金を得ることができ、資金調達に役立ちます。ただし、外部から見た企業の財務状況が見えにくくなるリスクもあるため、慎重な検討が必要です。
こうしたリスクを踏まえつつも、オフバランス化とリースバックを組み合わせることで、不動産売却による資金を有効に活用することが可能です。本記事では、この手法のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
リースバックとは
リースバックとは、不動産を売却後にリース契約を結び、同物件を賃貸借契約で利用し続けられる不動産活用方法を指します。
「リースバック」は、個人向けの住宅取引としてよく利用されますが、企業向けには「セール&リースバック」として、事務所や工場などの不動産も対象となります。企業がこれを活用することで、資産を売却して現金化し、キャッシュフローの改善を図ることができます。
また、リースバックは企業の財務戦略としてのみならず、特定のビジネス上のニーズに合わせた柔軟な解決策としても活用されています。たとえば、企業がオフィスや工場を売却した後、従業員の働く環境を維持しながら運営を継続できる点は、事業の安定性を確保するための重要な要素です。加えて、リースバックは成長戦略の一環として、設備投資の資金を確保する手段としても機能することがあります。
リースバックとオフバランス
企業がリースバックを使うと、不動産を売却して資金を得ることができます。最新の会計基準ではリース料が負債として計上されることが多く、オフバランス化が難しい場合もありますが、条件次第で可能なこともあります。
企業は事前に、リース料の支払い条件や契約期間を十分に考慮し、キャッシュフローと負債管理のバランスを取ることが求められます。リース契約の内容が柔軟であるかどうかも、オフバランス化の可否に影響を与えるため、慎重な計画が不可欠です。
オフバランス化のメリット
企業が自身の不動産をリースバックし、オフバランス化できる場合には具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。この章でわかりやすく解説します。
次の施策に資金を回しやすくなる
不動産は高額なため、すぐに売却して現金化するのは難しいです。保有している間は、事業の利益を使って投資額を回収しますが、それには時間がかかります。
一方で、オフバランス化を使って不動産を売却すれば、まとまった資金を得て次の投資に回すことができます。
資金調達の多様化を図れる
事業を続ける中で資金が必要になると、通常は銀行からの融資や株式・社債の発行によって資金を集めます。しかし、不動産を売却してオフバランス化すれば、会社の信用に頼らずに、不動産を使って資金を調達すること(アセットファイナンス)もできます。これにより、資金調達の選択肢を増やすことができます。
バランスシートをスリム化できる
オフバランス化をすると、会社の資産が減り、バランスシートが軽くなります。不動産を売却して得た資金で借金を返済できれば、会社の財務状況が改善し、信用力も高まることが期待されます。
また、売却で得た現金を効率よく活用できれば、経営指標も良くなります。
さらに、オフバランス化により企業は、経営指標を改善し、投資家や金融機関からの信頼を獲得しやすくなります。自己資本比率の向上は企業の財務基盤を強化し、長期的な成長に寄与します。ただし、リース料の負担を正確に予測することが重要です。契約の内容によっては、予期しないリスクが生じる可能性があるため、契約時にすべての要素を把握しておくことが重要です。
リスクの軽減
企業にとって不動産は安定した資産ではあるものの、市場動向で不動産価値が左右されたり、自然災害や老朽化によるリスクもあります。実際に日本経済はバブル経済による不動産価値の乱高下や、東日本大震災による甚大な被害を経験しています。売却することで不動産が抱えているリスクを減らす効果があります。
また、老朽化していくと定期的に修繕する必要があるため、売却して賃貸化した方がリスクだけではなくコストも軽減できる側面があります。
オフバランス化のデメリット
リースバックによるオフバランス化はメリットがある一方で、以下のようなデメリットも挙げられます。
オフバランス化後以降の資金調達が難しくなる
リースバックで不動産を売却してオフバランス化すると、バランスシート上の固定資産は減少します。しかし、最新の会計基準ではリース料が負債として計上されることが多く、完全なオフバランス化が難しい場合もあります。固定資産が減ることで、担保にできる資産が少なくなり、今後の資金調達が難しくなるリスクも考えられます。
賃料の負担が生じる
リースバック後は、賃料を支払って物件を引き続き利用できますが、固定資産税などの維持コストは不要になります。ただし、賃料負担が長期的に財務に影響を与える可能性があるため、慎重な財務計画が必要です。賃料が経費として計上される一方で、支出が従来より増える場合もあるため、リースバックを実行する前に、将来的な負担をしっかりと見極めることが重要です。
リースバックのオフバランス化以外のメリット
事業資金の獲得やオフバランス化など、魅力的なリースバックですが、オフバランス化以外にはどのようなメリットがあるでしょうか。この章でわかりやすく解説します。
不動産はそのまま利用できる
リースバックは、不動産を売却してもリース契約を結ぶことで同じ物件を引き続き利用できる仕組みです。オフィスや工場など、移転が難しい不動産の場合、転居や新たな施設投資のコストが発生しないのがメリットです。また、契約によっては、将来的に不動産を買い戻すオプションがある場合もあります。
クライアントに周知する必要がない
リースバックは同物件に継続して入居できるため、営業や工場の稼働などを止めることなく継続できます。オフィスの移転なども不要のため、不動産売却による移転をクライアントに周知する必要がありません。
企業にとって引っ越しがあると、名刺やサイトの変更なども強いられるため重い負担です。リースバックにはこうした負担は伴いません。
まとめ
本記事では、企業におけるリースバックをオフバランス化の観点から解説しました。リースバックには多くのメリットがありますが、最新の会計基準によりリース料が負債として計上されることがあり、オフバランス化が難しい場合もあります。オフバランス化が実現すれば、自己資本比率やROAの改善が期待できます。
不動産の活用方法として、リースバックの検討は有効です。詳細なご相談は、リースバックに豊富な実績を持つ弁護士法人リーガル東京まで、お気軽にお問い合わせください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
-コメント-
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