リースバックの転リースとは?メリット・仕組み・注意点等を解説
自宅を売却した後、賃貸物件として借りることで暮らしを継続できるリースバック。ではリースバック後の賃貸物件を、また「別の方に貸すこと」はできるでしょうか。
リースバックには「転リース」と呼ばれる手法があります。転リースとは、売却した不動産を借りた後に、さらに別の方に貸すこと(転借)を意味します。通常のリースバックよりもやや複雑ですが、転借自体は可能です。さらに定期的な賃料を手にすることもできるため、知っておくと得をすることも。
そこで、この記事ではリースバックの転リースについて解説します。転リースのメリットや仕組み、注意点もあわせて解説しますので、ぜひご一読ください。
リースバックの転リースとは
リースバックの転リースとは、「リースバック後に賃貸として住み続けている物件を、別の人に貸すこと」を意味します。通常のリースバックでは、自宅を不動産会社などに売却した後、さらに不動産会社との間に賃貸借契約を交し、同物件に今度は賃貸人として暮らします。このリースバックを行って借りた物件を、また別の人へ貸すのです。いわゆる「又貸し」の状態と言えます。
リースバックの転リースの仕組み
ではリースバック時の転リースはどのような仕組みなのでしょうか。
①まずは物件の所有者が、リース会社に物件を売却します。この時、物件の所有権はリース会社へ移転します。
②次にリース会社が物件を賃貸化し、元所有者に貸します。元所有者は賃料をリース会社へ支払います。ここまでが、「リースバック」で行うことです。
③最後に、リースバックにより賃貸化した物件を、元所有者が第三者に貸します。借りた第三者は、元所有者に対して転リース料を支払います。
この3つの流れが、転リースの仕組みです。一般的に元所有者は利益を得るために、リース会社へ支払う賃料よりも、高い転リース料を設定して第三者へリースしています。
ただし、転リースは貸主(所有者)の事前承諾なしではできません。承諾なしに転リースをした場合、リース契約解除の理由になります。
リースバックの転リースが行われるケース
リースバックの転リースは行われているケースもあるようですが、リース会社が転リースを制限しているケースが多いです。
ただ例外的に、リースバックの転リースが行われる場合があります。
それは、会社が所有している設備や不動産を、子会社が使用するケースです。例えばビル一棟を借りている会社が、その子会社や関連会社へ部屋を転リースする、といった形で利用されます。
転リースとサブリースの違い
転リースはサブリースと混同されることがあります。では、この2つの違いとは一体どのようなものでしょうか。
サブリースとは
サブリースも、本質的には「又貸し」を意味しています。
具体的には、サブリースとは「サブリース業者が不動産オーナーの所有するマンションやビルを一括で借り上げ、個々の部屋を入居者に貸し出す仕組み」のことを指します。
つまりサブリース業者が、入居者と不動産オーナーを繋げる役割を担うのです。
転リースとサブリースの違い
転リース | サブリース | |
賃借人(借りる人) | 物件の元所有者 | サブリース会社 |
賃貸人(貸す人) | リース会社 | 物件の所有者 |
転リースとサブリースでは、「入居者に物件を貸し出す人」が異なります。
転リースでは、入居者に部屋を貸すのは「物件の元所有者」でした。
しかしサブリースの場合、入居者に部屋を貸すのは「サブリース会社」です。この点が「転リース」と「サブリース」では大きく異なります。
リースバックの転リースを行うメリット
リースバック時の転リースには一体どのようなメリットがあるでしょうか。この章では3つのメリットを紹介します。
オフバランスができる
オフバランスとは、資産を貸借対照表から外すことで、財務状況を改善することを指します。リースバックと転リースを行うことにより、このオフバランス化が期待できます。
例えば会社が所有する物件をリースバックすると、固定資産を現金化することができ、貸借対照表がスリムになります。
さらに、不動産を持つことによる「価格変動リスク」「災害リスク」も気に掛ける必要がなくなります。
金融機関から追加融資を受けなくても、自社グループ内で資金調達が達成できることも、大きなメリットでしょう。
負担を軽減できる
リースバックと転リースを活用することにより、経済的な負担を減らせます。例えば物件を所有すると、固定資産税が発生します。さらに物件の管理・修繕などの管理コストもかかるでしょう。しかし、リースバックを通して物件を売却すれば所有者ではなくなるため、税金や管理費などの負担が軽減されます。
他人に賃貸している資産を元に資金調達ができる
リースバックには資金調達ができるというメリットがあります。
会社の資金調達は、金融機関から融資を受ける方法が一般的です。しかしリースバックを行えば、金融機関を介さずとも多額の資金を調達できるメリットがあります。
リースバックの転リースを行うデメリット
リースバックの転リースは優れた資金調達方法ではあるものの、デメリットもあります。それは転リース先の経済的な負担です。
リースバック後に借主が支払う賃料は、周辺の賃貸物件よりも少し高く設定されます。その物件を転リースする場合、その割高な賃料に加え転リースによる利益分も上乗せする必要があります。そのため転リース先が支払う転リース代は、最終的にかなり高額になる可能性があります。
リースバックの転リースを行う際の注意点
リースバックで転リースを行う場合には、知っておきたい2つの注意点があります。
所有者に無断で転リースを行うことは禁止されている
多くのリースバック契約では、転貸である転リースは固く禁じられています。リースバックをした後に利益を得たいという気持ちは理解できますが、所有者に無断で転リースすると大きなトラブルと繋がることが予想されます。
転リースを希望する場合は、リースバック検討時の段階からリース会社側に相談するようにしましょう。
転リースは所有者の許可が必要とされている
もし転リースが可能な契約であった場合でも、転リースを行う際は必ず所有者の許可の上で行う必要があります。これは民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」にて定められています。転リースを行う場合は、賃貸人の許可を得た後に行いましょう。
リースバックの転リースのリスク
転リースをリースバック時に行う場合、どのようなリスクがあるでしょうか。
①通常のリースバックのリスクが発生する
転リースであっても、通常のリースバックと同じようなリスクがあります。つまり、賃料が高額に設定されるリスクです。
通常のリースバックの賃貸料は、周辺の不動産賃貸料よりも高く設定されます。その物件をさらに転リースするということは、転リース先には大きな経済的負担がかかることが予想されます。
そのためリースバックの転リースを行う際は、転リース先(入居者)の支払い能力を十分に考慮する必要があります。
②転借人によるトラブルのリスクもある
転借人が物件に破損や汚損を与えてしまった場合、一般的にはリース料を受け取っている賃借人側にも損害賠償責任が発生します。また、入居者が転リース料を支払えなくなることも想定しておくべきでしょう。
まとめ
この記事ではリースバック時の転リースについて、メリットや仕組み、注意点も交えながら詳しく解説を行いました。リースバック時には事業資金の獲得などのために、転リースという手法を活用できるケースがあります。
しかし、転リースは所有者側の許可が必要です。また、転リースならではのリスクもあるため、利用する際は慎重に判断しましょう。
リースバックや転リースは、不動産や債務整理、事業整理などにも精通している弁護士に相談するのも一手です。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
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