持ち家に住みつつ生活保護を受給できる?リースバックする際の注意点と相談先を解説
持ち家はあるものの、病気などを理由に働けなくなってしまった場合、「生活保護」を受けられる可能性があります。生活保護制度とは生活が困窮している方に対して、国が保護費を支給する制度のことをいいます。ただし、預金などの資産がある場合は、まずはそれを生活費として使う必要があります。
では、「持ち家」がある場合はどうすればよいのでしょうか。この記事では、持ち家に住みつつ生活保護を受給できるのかどうかを詳しく解説します。また、持ち家のリースバックについての注意点や相談先にも触れますので、ぜひご一読ください。
ローン付きの持ち家があると生活保護を受給できない?
生活保護を受けたい場合、「ローン付きの持ち家」があると生活保護は受給できるのでしょうか。結論から言うと、原則として受給できません。生活保護費をローンの返済に充てることは、本制度の趣旨に反すると考えられるためです。ただし、残債も返済金額もわずかな場合などは、利用できる可能性はあります。
生活保護制度を利用する場合、ローンつきの持ち家は基本的に処分する必要があり、賃貸住宅の家賃にも制限が設けられていることを知っておきましょう。
そのため、ローンを抱えたまま生活保護を申請することは、現実的には非常に困難です。ローンの残高が多い場合は、生活保護を受給する前にリースバックや売却を検討することが必要になるでしょう。こうした選択肢を選ぶ際には、事前に弁護士や不動産の専門家に相談し、最適な方法を見つけることが重要です。
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リースバックとは
リースバックとは、現在所有している自宅を売却した後に、その家を賃貸借契約して借りることを意味します。自宅を売却すると一度にまとまった資金を得られるため、高齢者の生活資金や、事業者の資金獲得にも活用されています。
借金が多く困窮している場合も、この手法は有効です。売却代金を返済に充当することが可能であり、引き続き同じ住まいに暮らすこともできます。
さらに、リースバックは急な資金が必要になった際や、相続対策としても利用されるケースが増えています。特に高齢者にとっては、生活環境を変えずに資産を現金化できる点が大きなメリットです。
【関連記事】リースバックとは何?わかりやすく仕組み・メリット・デメリットを解説
リースバックすると生活保護を受給できるのか
今持ち家があり、リースバックによって資金を得た場合には生活保護の受給はできるでしょうか。
生活保護を受けるためには、資産が一定の基準を下回っていることが条件に挙げられます。持ち家は資産として扱われるため、生活保護を受けることができません。
ただし、生活保護の要件は各市区町村によって異なったり、不動産の状態などにも左右されます。まずは最寄りの自治体に相談することが大切です。
また、リースバックで得た資金を無駄遣いせず、計画的に使用することが求められます。生活保護を受給するためには、資産が一定の基準を下回っている必要がありますが、資金を適切に管理しなければ、再び経済的困窮に陥るリスクがあるためです。
生活保護で受給できる金額
生活保護を受給する場合、どの程度の金額を受給できるでしょうか。詳しくは以下の通りです。
生活保護費は一律ではない
生活保護費は、必要な方に対して一律の金額で支払われているとは限りません。受給できる金額は収入が最低生活費に満たない場合に、その差額を生活保護費と認めています。
生活保護は世帯単位で支給されており、家族1人ずつに支給されることはありません。婚姻関係など問わずに支給されており、同一の住居に住み、生計をともにしている者は同一世帯とみなされます。
■支給できる生活保護費の算式
生活保護費=最低生活費-収入(※)
最低生活費は、一般的に生活扶助+住宅扶助によって計算されます。
生活扶助とは、食費や光熱費など生活に欠かせない費用、住宅扶助とは住居の確保に必要な費用のことを指します。
(※)収入には就労による給料や報酬だけではなく、年金なども含みます。
リースバック後に生活保護を申請する際の注意点
高齢者となり生活に困窮している、病気で就労できなくなり苦しいなどのケースでは、リースバック後に生活保護費を申請することも考えられます。では、実際に申請する場合にはどのような注意点があるでしょうか。この章で詳しく解説します。
資産状況によっては受給できない
生活保護は申請すれば誰でも認められる制度ではなく、病気などやむを得ない事情で生活が困窮している方に支給が認められる制度でもあります。そのため、所有している財産に高額の資産がある場合、認められないケースが発生します。持ち家だけでなく、車など別の資産がある場合も認められない可能性があるため注意が必要です。
生活保護の支給要件は複雑
生活保護の支給に関しては、現況のヒアリングを受け、支給要件をクリアしているかどうかを確認されます。
リースバック後に生活保護を申請する際には、賃料が生活保護の住宅扶助基準を超えないことが重要です。生活保護には、住居を維持するために支給される住宅扶助という補助金があり、家賃や住居の維持費がこの範囲内であれば扶助が受けられます。しかし、各地域で定められた基準額を超える家賃の支払いがある場合は、生活保護の対象から外れることがあります。
例えば、東京都の住宅扶助基準額は以下の通りです。
級地 | 地域 | 単身世帯 | 2人世帯 | 3~5人世帯 | 6人世帯 | 7人以上世帯 |
1級地 | 特別区23区全域と2級地の市(羽村市・あきる野市)を除く24市 | 53,700円 | 64,000円 | 69,800円 | 75,900円 | 83,800円 |
2級地 | 羽村市、あきる野市、瑞穂町 | 45,000円 | 54,000円 | 59,000円 | 63,000円 | 70,000円 |
3級地 | 日の出町、桧原村、奥多摩町、島しょ(町村部) | 49,000円 | 49,000円 | 53,200円 | 57,000円 | 63,800円 |
引用元:東京都福祉保健局『生活保護「住宅扶助基準額」の見直しについて』より
このように、賃料が基準額以下でなければ、生活保護を受けることができません。例えば、23区で夫婦2人の場合、月額賃料は64,000円以下でなければなりません。
リースバック後の賃料が住宅扶助基準額を超える場合、生活保護の対象外となり、家賃の自己負担が発生します。そのため、まずは最寄りの自治体に相談し、賃料が基準額内に収まるかどうか確認することが重要です。また、無理のない計画を立てるために、不動産専門家や弁護士と連携して進めることをおすすめします。
リースバックの賃料の決め方
生活保護を見据えてリースバックをする場合、賃料の決め方を知っておくことが大切です。この章では賃料の決め方をわかりやすく解説します。
リースバック時の賃料の算出方法
リースバックで売却した物件に引き続き暮らすためには、賃料を支払う必要があります。一般的な不動産の賃料は、立地や物件の種別、築年数などによって算出されます。リースバックによる賃料は、通常は物件の売却価格に基づき、投資家が期待する利回りを基に決定されます。
■賃料の算出方法
1ヶ月の賃料は、以下の計算式で算出されます。
1ヶ月の賃料=売却価格×期待利回り÷12ヶ月
例えば、売却価格が2,000万円の場合、期待利回りを6%とすると、1ヶ月の賃料は次のように計算されます。
2,000万円 × 6% ÷ 12ヶ月 = 10万円
リースバックによる賃料は、売却価格が高ければ高いほど月々の支払いも高額になります。特に高齢者や収入が限られている方にとっては、支払いが困難になる場合もあるため、慎重に計画を立てることが重要です。リースバックを選択する際には、将来の収入や生活費も見据えて賃料を算出し、無理のない範囲で生活を維持できるかどうかを確認しましょう。
リースバックの可否は専門家へ相談を
この記事では持ち家に住みつつ、生活保護を受給することについて、リースバックの視点も交えながら詳しく解説しました。生活保護の受給にはさまざまな要件が設けられており、リースバックだけを行っても受給できない場合があります。
また、住宅ローン以外の借金がある場合、債務整理を視野に解決を目指すことも検討するべきでしょう。弁護士法人リーガル東京では暮らしのご状況に合わせて、さまざまなお悩みへの解決方法を提案しています。
リースバックと生活保護の併用ができるかどうかについては、リースバック後の家賃も見据えながら判断する必要があり、弁護士に相談することがおすすめです。まずは不動産の査定、リースバックのお申し込みなど、お気軽にお寄せください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
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