リースバックの名義変更の手続きとは?登記について解説
不動産を他社に売ったり譲ったりした時には、その不動産について、登記簿上の名義変更を行う必要があります。
これは、リースバックの場合も同じです。リースバックでは、自宅不動産の所有権が売主から不動産会社に移るため、やはり名義変更の必要性が生じます。
では、不動産の名義変更手続きとはどのようなものなのでしょうか。
今回は、不動産における登記簿上の名義変更手続きについて、リースバックの場合も含め、わかりやすく解説していきます。
名義変更とは
不動産を所有した場合、その所有者には不動産の登記を行う義務はありません。しかし、登記を行わないと利害関係ある第三者に対して所有権を主張できないため、登記を行うことが強く推奨されます。
不動産登記とは、対象の土地や建物の所有者が誰か等の、権利関係を公的に明示する制度のことを指します。
リースバックなどで不動産を売却した場合や相続で不動産を受け継いだ場合には、その不動産の所有者が変わるため、登記事項証明書(登記簿)上の名義変更(所有権移転登記)を行う必要があります。
登記事項証明書(登記簿)の名義を変更するためには、登記申請書や登記原因証明情報、印鑑証明書などの書類を提出した上で、法務局の審査を受けなければなりません。登記申請に必要な書類の準備から登記完了まで、数週間から1カ月程度の時間が必要になります。
登記事項証明書とは
登記事項証明書とは、対象の不動産について、所在地や面積、所有者情報、抵当権などの権利関係が記載された公的な証明書のことをいいます。そのデータは登記簿とも呼ばれます。
登記簿のデータは法務局によって管理されており、法務局の窓口やオンラインで申請を行うことで登記事項証明書として取得することができます。
不動産の名義変更では、この登記事項証明書および登記簿データに記載される不動産の所有者情報を変更することになります。
名義変更の手続きは自分で行うことが可能
登記簿上の不動産の名義変更手続きは、法務局に出向いて行うことが可能ですが、郵送で手続きできる場合もあります。
ただしこの手続きは、基本的に登記権利者と登記義務者が共同で行わなければなりません。不動産売買の場合であれば、買主が登記権利者、売主が登記義務者となります。
また、相続による名義変更の場合に限っては、登記義務者は亡くなっているため、例外的に登記権利者単独での手続きが認められています。
とはいえ、名義変更の手続きは複雑で、不動産を売買や相続する本人だけで手続きを進めるのは難しい場合があります。スムーズに負担を軽減しながら手続きを進めるには、司法書士や弁護士に手続きのサポートを依頼することも検討しましょう。
売買などで名義変更の手続きに必要な書類
登記簿上の不動産の売買や贈与などで名義変更手続きには、次の書類が必要になります。
・登記識別情報(登記済権利証)
・不動産を手放す人の印鑑証明書(登記申請時から3ヶ月以内発行のもの)
・固定資産評価証明書
・新しい所有者の住民票
名義変更では、ケースによって必要な書類が異なります。売買の場合であれば、上記の書類に加えて売買契約書が必要になりますし、相続の場合であれば、戸籍謄本や遺産分割協議書が必要になります。
必要書類については、法務局や依頼する司法書士や弁護士によく確認しておくと良いでしょう。
名義変更の手続きにかかる費用
不動産の名義変更には、次の費用がかかります。
・登録免許税:売買・贈与・離婚の場合は固定資産評価額×2%、相続の場合は固定資産評価額×0.4%
・専門家への依頼費用:司法書士や弁護士に登記申請を依頼する場合、数万~十数万円程度。税理士に税務申告を依頼する場合は、相続税や贈与税の計算に応じた追加費用が発生する場合がある
・書類取得費用:1通数百円〜数千円(印鑑証明書、固定資産評価証明書など)
・譲渡所得税:不動産売却で譲渡所得が発生した場合、短期譲渡は約39%、長期譲渡は約20%
他にも、ケースによっては相続税や贈与税、不動産取得税などの支払いが発生します。
実費以外に、各種税金の支払いが発生する可能性があることを理解しておきましょう。
名義変更の手続きの手順
不動産の名義変更は、次の手順で進めます。
・司法書士・弁護士などに登記申請書の作成依頼
・必要書類の用意(登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書など)
・法務局に登記申請書などの書類を提出
・新たな登記識別情報及び登記完了書の交付
手続きは流れ自体はシンプルに見えますが、必要書類が多く、記入や準備に時間がかかる場合があります。特に書類に不備があると手続きが遅れるため、必要書類の確認と準備は早めに行いましょう。
リースバックとは
不動産の名義変更が必要になる取引に、「リースバック」があります。
リースバックとは、所有する自宅を不動産会社に売却すると同時に賃貸借契約を結び、家賃を支払いながらそこに住み続ける形の不動産取引の方法を指します。リースバックを利用すれば、売主は自宅を売却した後も引っ越す必要がなく、住宅の維持費を軽減し、まとまった資金を手に入れることができます。
【関連記事】リースバックとは何?わかりやすく仕組み・メリット・デメリットを解説
リースバックの流れ
リースバックを利用する場合、次の流れで手続きは進められます。
・リースバック・不動産会社への問い合わせ・リースバック条件仮査定
・リースバック条件本査定・保証会社の審査
・契約内容・条件の話し合い
・売買契約・賃貸借契約締結
・代金決済・自宅不動産の名義変更
・賃貸での居住開始
まずは、リースバックに対応している複数の不動産会社に問い合わせ、仮査定を受け、依頼する会社を選びます。依頼する会社が決まったら、本査定と賃貸保証会社の審査を受け、契約内容や条件を話し合い、問題がなければ自宅不動産の売買契約と賃貸借契約を締結します。
決済を済ませ名義変更を行ったら、自宅不動産の売却は完了です。その後は、賃貸借契約が開始され、売主は家賃を支払いながら引き続きその家に住み続けます。
また、リースバックでは、契約に買い戻し特約を付けておくことで、売主は将来的に売却した自宅不動産を買い戻すことが可能です。
リースバックにおける所有権の移転
リースバックを利用する場合、自宅の所有者は不動産会社に自宅を売却し、売却資金を得ることになります。すると、当然不動産の所有権は不動産会社に移転します。
また、既にご紹介したとおり、リースバックでは、元の所有者が将来的に自宅を買い戻すことができます。
買い戻しには、不動産会社に資金を支払い、契約条件に基づいて所有権を再取得する必要があります。売却時には所有権が不動産会社に移転し、買い戻しが成立すれば再び元の所有者に所有権が戻ります。
リースバックで買い戻しを行う際の注意点
リースバックを利用し、いずれ自宅を買い戻したいと考えている場合には、家賃の滞納に注意する必要があります。
リースバックでは、元々の自宅に賃料を支払って住み続けることになります。
しかし、この賃料を数カ月にわたって滞納してしまった場合、自宅を買い戻す権利が消滅する可能性があります。場合によっては、賃貸借契約違反として退去を求められることもあります。
このようなリスクを避けるためには、家賃をきちんと支払うことはもちろん、その他の契約に違反しないよう気をつけましょう。
リースバックで名義変更する必要はある?
前述のとおり、リースバックでは、売主と不動産会社の間で所有権の移転が行われるため、自宅の売却時と買い戻し時に名義変更が必要となります。不動産の名義変更は、所有権が移転するたびに必ず行わなければなりません。
不動産の所有権が移転しているにも関わらず名義変更を行わなかった場合、過料を科せられる可能性がある他、不動産に関する手続きが複雑になることも考えられます。名義変更の手続きはなるべく速やかに行うようにしましょう。
リースバックの名義変更に必要な書類
リースバックにあたって不動産の名義変更を行う場合、必要な書類は前述したものと変わりません。ただし、リースバックでは売買契約と賃貸借契約も行う必要があるため、必要な書類はいくつか追加されることになります。
リースバックの手続きに必要な基本的な書類は以下のとおりです。
・住民票(売主)
・登記識別情報(登記済権利証)
・印鑑証明書(売主のもの、取得から3ヶ月以内のもの)
・固定資産評価証明書(対象不動産)
・収入証明書(売主兼賃借人)
・身分証明書(売主)など
上記に加え、状況や不動産会社によっては、住宅ローンの残高明細書や不動産の重要事項説明書などの書類が必要になることもあります。
どの書類が必要かは、不動産会社によく確認しておくようにしてください。
リースバックによる名義変更のメリット・デメリット
リースバックで不動産を売却すると、その不動産の所有権は移転し、名義も変更されます。これにより、不動産の売主は以下のメリットとデメリットを受けることになります。
【メリット】
・売却した自宅に住み続けることができる
・住宅の維持コストの負担が軽減される(住宅ローン、固定資産税、メンテナンス費用など)
・不動産の価値の下落を心配せずに済む など
【デメリット】
・売却金額が低くなる可能性がある
・買い戻さない限り住宅が自分の資産にならない など
売却した自宅に住み続けながら、住宅コストの負担を軽減できる点が、売主にとってのリースバック最大のメリットです。所有者が自分ではないため、その物件は自分の資産にはならないものの、売主はその代わりに不動産の価値の下落リスクを負わずに済みます。
ただし、リースバックでは不動産会社が物件を購入するため、通常の売却よりも売却金額は安くなる傾向がある点は押さえておきましょう。
まとめ
売買や相続、贈与などによって不動産の所有権が移行する際には、登記簿上の名義変更の手続きが必要になります。この手続きに必要な書類はケースによって異なるため、法務局や司法書士、弁護士によく確認し、早めに準備を進めておくようにしましょう。
リースバックの場合も名義変更の手続きは必要ですが、この場合は、詳細について取引先の不動産会社に確認することをおすすめします。
リーガル東京では、ご自宅のリースバックに関するご相談を受け付けています。
当グループには、不動産に特化した弁護士や税理士、FPや宅建の資格を保有する専門家が所属しています。不動産会社とも連携して、最適なアドバイスやサポートを行います。
ご自宅の住宅ローンや固定資産税、管理費、修繕費などの維持費や相続についてお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
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