債務整理とは?方法や費用相場等をわかりやすく解説

借金の返済が困難になった場合には、債務整理が選択肢の一つに挙げられます。
債務整理とは、法的または私的な手続きで借金の総額を減らして、その後の返済継続を可能にしたり、債務をゼロにしたりする手続きのことです。具体的な方法には特徴の異なる複数の種類があるため、債務整理の実施にあたっては、ケースに合った方法を選択する必要があります。
今回は債務整理とは何なのか、また種類ごとの費用相場や手続きについて、わかりやすく解説していきます。
債務整理とは
債務整理には、自己破産・個人再生・任意整理があります。
返済が困難になった借金について、借金の総額を減額・免責(借金返済を強制されない)したり返済期間を延ばしたりするための手続きのことです。
任意整理や、自己破産・自己破産の申し立てについては、年齢や職業などの制限を受けることはありません。
また、住宅ローンやカードローン、クレジットカードのリボ払い、奨学金、個人からの借金など、ほとんど全ての借金を対象とすることが可能です。
自己破産については、以下のものが非免責債権(返済義務が免除されない債権)となります。
・公租公課(税金・国民年金・国民健康保険)
・養育費
・婚姻費用
・罰金
・悪意による不法行為に基づく損害賠償請求
・故意または重大な過失
個人再生については、以下再生手続きの対象とはなりません (非減免債権) 。
・公租公課(税金・国民年金・国民健康保険)
・養育費
・婚姻費用
・罰金
・悪意による不法行為に基づく損害賠償請求
・故意または重大な過失
・雇用関係に基づいた使用人への給料と預り金
・優先権のある債権(抵当権などの別除権付債権)
債務整理の方法
債務整理の代表的な方法には、以下の3つがあります。
①任意整理
②個人再生
③自己破産
それぞれの方法について詳しくご説明します。
①任意整理
任意整理とは、裁判所を間に入れず、債権者と直接交渉する方法です。
多くの場合、弁護士や司法書士(※一定の制限あり)が交渉に入ります。将来の利息の免除を交渉し、返済額の減額を目指します。 さらに、3年から5年程度で完済できるよう、返済期間の再設定も行います。
任意整理は、整理する借金の対象を選ぶことができるのが大きな特徴です。例えば、住宅ローンはそのまま返済を続け、カードローンのみ任意整理を行うということが可能になります。
家などの財産を保持しながら債務整理を行うことができる点は、任意整理の大きなメリットでしょう。
ただし、任意整理の借金減額幅は、後に紹介する2つの手続きに比べ小さいです。毎月一定の返済も続くため、継続的な安定した収入があることが条件となります。
②個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てを行って、借金を大幅に減額する方法です。「どのように返済するか」をまとめた計画書(再生計画案)を裁判所に提出し、債権者の同意を得た上で認定を受けることで、借金減額を実現することができます。
個人再生では、抱えている借金を最大で5分の1程度(場合によっては10分の1)減額することが可能です。ただし、債務者に一定の資産がある場合、減額の幅が少なくなります。
これは破産的清算価値による制限です。
総債務額が500万円未満の場合、最低でも100万円は返済しなければなりません。
また、制度を利用するには「借金総額が無担保債務で5,000万円以下」「将来にわたって継続的な安定した収入」などの条件を満たす必要があります。
また個人再生では、住宅ローン特則を付加することで、住宅ローンも再生手続きの対象にできます。これにより、個人再生を行っても、住宅ローン返済を続けながら自宅を保有し続けることができます。ただし、住宅ローン自体の減額はできません。
【関連記事】個人再生とは?手続きの流れや任意整理・自己破産との違い等も解説
③自己破産
自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、借金の返済を全額免責(借金の返済を強制されない)してもらう方法です。ただし、税金や養育費など、一部の支払い義務は免除されません。借金の返済が著しく困難であり、支払不能と判断された場合に利用できます。
自己破産では、借金の返済を強制されなくなりますが(任意の支払いは有効)、住宅などの価値のある財産は原則として全て売却され、そのお金が債権者に配分されます。 ただし、生活に必要な一定の財産(99万円以下の現金や衣服・家具など)は手元に残せます。
また自己破産は、借金の理由によっては、借金の免責が認められない場合があります。 例えば、ギャンブルや浪費によって作った借金がある場合は免責不許可事由に該当しますので自己破産をしても免責されません。 ただし、裁判所の判断によって例外的に借金の免責が認められることもあります (裁量免責) 。
過払い金請求とは
過払い金請求は、債務整理とは異なる手続きですが、借金問題の解決策の1つとして提案されることがあります。
過払い金請求とは、債権者に対して債務者が払い過ぎていた利息を返還してもらう手続きのことです。過払い金がある場合、今抱えている借金と相殺して、借金が減ったりなくなったりすることがあります。
「2010年6月17日以前に契約した貸金業者からの借金がある」「借金を完済後最終取引日から10年以内」の方などは過払い金がある可能性があっても時効消滅を主張されることがあります。
債務整理の費用相場
債務整理には、依頼する弁護士に支払う費用と、裁判所への申し立て費用がかかります。
以下に、債務整理の方法ごとの費用相場を示します。
| 方法の種類 | 弁護士費用 | 裁判所への申立費用 |
| 任意整理 | 債権者1社につき4万4千〜11万円(相談料・着手金・報酬) | なし |
| 個人再生 | 33万〜77万円(相談料・着手金・報酬) | 3万~23万円(印紙代・郵券代・予納金等) |
| 自己破産 | 33万〜55万円(相談料・着手金・報酬) | 2万~22万円程度(印紙代・郵券代・予納金等) |
参照元:東京三弁護士会報酬基準
これらはあくまで目安であり、依頼する弁護士の事務所によって費用は異なります。 また、個人再生や自己破産では、手続きの内容や裁判所の判断によって、必要な費用が変わることがあります。
安心して手続きを進めるためにも、具体的な費用については、相談時に専門家によく確認しておくことが重要です。
債務整理が生活に与える影響
債務整理を検討する際に、生活に与える影響について不安に思われる方は多いです。ここでは、債務整理が生活に与える影響に関してよくある質問を挙げ、それに回答していきます。
クレジットカードが作れない?
債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されるため、5〜7年ほどはクレジットカードを作成・使用することができなくなります。またこの期間は、ローンを組むことも基本的にはできません。
ただし、事故情報の登録期間が終了すれば、新たにクレジットカードを作成したりローンを組めたりする可能性があります。
持ち家や車はどうなる?
どの手続きを選択するかによって、持ち家や車などの財産がどうなるかは異なります。
任意整理では、住宅ローンやカーローンを整理の対象とせず、支払いを継続すれば、原則として持ち家や車を維持できます。ただし、支払いが滞ると差し押さえや引き上げの可能性があるため注意が必要です。
個人再生の場合、住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンをそのまま支払い続けることで、持ち家を残すことが可能です。また、カーローンが残っている場合、ローンの支払いが終わるまで車の所有権はローン会社にあるため、支払いが滞ると車を引き上げられる可能性が高いです。 一方で、ローンを完済している財産については、保有し続けることができます。
ただし、車を仕事として利用しているケース(個人タクシー・個人トラック運転手)などは例外となる場合があります。
自己破産の場合、持ち家や車などの価値のある財産は売却され、債権者への返済に充てられます。一方で、99万円以下の現金や生活必需品などの自由財産は手元に残せます。
なお、99万円以下の現金について自由財産として認められるケースが多いです。
債務整理の方法は、「保有している財産をどうしたいか」という点も重視して選ぶことが大切です。
【関連記事】自宅を維持する債務整理の方法:「リースバックと自己破産の併用」「個人再生」「任意整理」を比較
債務整理をしたことを周りに知られる?
個人再生や自己破産をした場合、債務者の氏名や住所は官報に掲載されます。官報を日頃から読む人は少ないですが、金融機関や税務関連の職業に就いている人は閲覧することがあるため、知られる可能性はゼロではありません。
任意整理の場合は官報に掲載されることはないので、手続きをしたことを自分から話さなければ、基本的に周囲に知られることはありません。
また、債務整理の事実については履歴書に書く必要はなく、戸籍や住民票にも記載されません。そのため、就職や転職、結婚などに直接的な影響が出ることはほぼありません。
【関連記事】個人再生で官報に掲載されると周囲に知られる?弁護士に相談するメリット等を解説
債務整理の手続きの流れ
債務整理の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。
| 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
| ①弁護士事務所へ相談し委任契約を締結する | ①弁護士事務所へ相談し委任契約を締結する | ①弁護士事務所へ相談し委任契約を締結する |
| ②弁護士が債権者に対し受任通知を送付する | ②申し立てに必要な資料を用意し、裁判所へ個人再生の申し立てを行う | ②申し立てに必要な資料を用意し、裁判所へ自己破産の申し立てを行う |
| ③債権者から債権届を受領し、債務額を確定させる | ③個人再生委員の面接を受け、問題ないと判断された場合、開始決定される | ③破産管財人の弁護士と面接し開始決定される(管財事件の場合) |
| ④債権者と交渉を行う | ④債権届け出及び、債務者による異議申述 | ④債権者集会が開かれる |
| ⑤和解契約書を作成する | ⑤再生計画案を裁判所に提出する | ⑤免責審尋期日が開かれる |
| ⑥返済開始 | ⑥裁判所による再生計画の認可決定を受け、返済開始 | ⑥裁判所の決定により、借金の返済義務が免責される |
債務整理では、どの場合でもまず弁護士に相談し、委任契約を締結することから始まります。
任意整理では、弁護士が債権者と直接交渉し、個人再生・自己破産では裁判所を通じて手続きを進めます。
債務整理にかかる期間の目安
債務整理を依頼してから解決までにかかる期間の目安は、選択する方法によって異なります。各方法の目安は以下のとおりです。
・任意整理:3~6カ月程度
・個人再生:1年~1年半程度 ※申し立てから手続き終了までの期間は6ヶ月程度が一般的
・自己破産:5カ月~1年程度 ※管財事件の場合、申し立てから手続き終了までの期間は6ヶ月程度が多い
これらはあくまで目安であり、各ケースによって所要期間は異なります。例えば、債権者の数が多い場合や、債権者との合意に時間がかかる場合には、これらの目安よりも長い期間を要することがあります。
まとめ
債務整理は、法律にもとづき、返済困難になった借金を減額したり返済期間を延長したりする手続きです。
具体的な方法には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があり、どれを選択するかによって借金の減額幅や財産維持の可否、手続きの流れなどは大きく異なります。自分の状況やニーズに最適な方法を選ぶためには、借金問題を取り扱う弁護士にサポートを受けると良いでしょう。
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監修者

氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
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