Column
コラム

長生きはリスクになる?リバースモーゲージとリースバックの注意点を解説

リースバック 長生き

自宅を活用して資金を得る方法には「リバースモーゲージ」と「リースバック」の2つがあります。これらは、高齢化が進む日本社会において、老後の生活資金を確保するための有効な手段として注目されています。自宅を使って資金調達を行いたい高齢者の中には、これらの手法に関心を持つ方も多いでしょう。

ただし、これらの方法にはそれぞれ特徴やリスクがあり、特に「長生き」することが予想以上にリスクになる可能性があります。本記事では、リバースモーゲージとリースバックの違いと、それぞれの注意点を詳しく解説します。

 

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、借り入れた本人が生存中は利息のみを支払い、元本の返済は死亡後に行われる仕組みです。金融機関が提供するこの商品は、通常、返済は不動産の売却によって行われます。リバースモーゲージの大きな特徴は、借り入れた資金を生きている間は返済せず、死亡後に担保不動産を売却して返済に充てる点です。

【関連記事】リースバックとリバースモーゲージの違い|メリット・デメリットも解説

 

リバースモーゲージの注意点

リバースモーゲージは、高齢者が自宅を担保に資金を得る方法ですが、注意点もあります。この章では、その主な注意点を8つ解説します。

契約者が亡くなった場合のリスク

リバースモーゲージでは、契約者が死亡した際に家族が自宅で住み続けられなくなるリスクがあります。契約者が亡くなり、相続人が一括返済できない場合、担保となっている不動産を売却して返済に充てる必要があります。

特に、不動産の評価額が借入額に満たない場合、契約内容によっては法定相続人が不足分を一括返済する義務を負うことがあります。ただし、ノンリコース型のように担保不動産の売却によって不足分が免除される仕組みもあります。そのため、契約前に家族全員の同意や契約内容の確認が重要です。

家族との合意に関するリスク

リバースモーゲージは契約終了時に、通常は担保となっている不動産を売却して返済に充てますが、相続人が返済すれば不動産を引き継げる場合もあるため、必ずしも相続できないわけではありません。

一部のリバースモーゲージ商品では、推定相続人(家族)の同意が求められることがあり、契約の段階で家族の意向がまとまらずトラブルになるケースも考えられます。

借入限度額が通常の住宅ローンの借入金額よりも低くなる

リバースモーゲージの借入限度額は、通常の住宅ローンと比べて低く設定される傾向があります。具体的には、不動産評価額の『50~70%』(『みずほ銀行:リバースモーゲージが「罠」「やばい」と言われる理由と検討ポイント』より)です。
これは、担保不動産が売却される時期が数十年後になる可能性があるため、評価額が低めに見積もられるためです。

通常の住宅ローンは、収入がある段階での借入に適しており、毎月の返済が必要です。一方、リバースモーゲージは返済が契約者の死亡後や不動産売却時まで延期されるため、目的やライフプランに応じて選択が必要です。

金利の上昇

リバースモーゲージはあくまでも融資であるため、借入期間中に利息が累積します。金利は変動することが多く、金利が上昇すると累積される利息が増加し、借入限度額に達するリスクがあります。
多くのリバースモーゲージは変動金利を採用しているため、新たな借入ができなくなり、生活に影響が出る可能性があります。

担保価値の見直しと下落リスク

リバースモーゲージでは、定期的に自宅の担保価値が見直されます。建物の価値が大幅に下落すると、融資の限度額が減少する可能性があり、限度額を超える借入があれば、返済を求められる場合があります。この際、返済が難しければ、自宅を失うリスクも生じます。

物件の条件や立地による制約

リバースモーゲージは物件の条件が厳しいため、マンションは対象外となることが多く、利用できない場合があります。また、物件の市場価値が低い場合や、過疎エリアにある物件は、金融機関がリスクを考慮して契約を断ることが一般的です。これらの理由から、対象地域や物件の条件が制限されるため、リバースモーゲージは使いにくいと感じる人もいます。

契約の引き継ぎに制約がある

夫婦2人暮らしでリバースモーゲージを利用している場合、契約者が死亡した後も住み慣れた自宅で暮らし続けたいと考える方は多いでしょう。しかし、基本的には契約者の死亡時点でリバースモーゲージ契約は終了し、自宅は売却されて借入金の返済に充てられます。

ただし、一部の金融機関では、配偶者を共同契約者にするなどの特約を設け、契約者死亡後も配偶者が引き続き住み続けられる商品が提供されている場合があります。そのため、事前にこうした選択肢を確認することが重要です。

子どもとの同居は制限されることが多い

リバースモーゲージは、主に単身者や夫婦2人暮らしを対象としており、子どもと同居している世帯では契約が制限されることが多いです。

ただし、一部の金融機関では、同居する家族がいる場合でも利用可能な商品が提供されています。この場合でも、契約者が亡くなった際には、通常、担保となっている自宅を売却して返済するため、家族が住み続けることは難しくなります。しかし、金融機関によっては、特定の条件を満たすことで家族が引き続き居住できる例もあります。
そのため、家族との同居を考慮している場合は、利用する金融機関や商品内容を慎重に選ぶことが重要です。

 

リースバックとは

リースバックはリバースモーゲージとは異なり、自宅の売却によって資金を得る不動産の活用方法です。売却後は同じ物件に家賃を支払うことで継続して暮らすことができます。つまり、利息は発生しません。
リースバックは賃貸借契約によっては買戻しもできるほか、住宅ローンの返済に窮してしまった方も、債権者に交渉することでリースバックができる可能性があります。

【関連記事】リースバックとは何?わかりやすく仕組み・メリット・デメリットを解説

 

リースバックの注意点

では、リースバック時にはどのような注意点があるでしょうか。この章では注意点を4つご紹介します。

定期建物賃貸借(定期借家)契約

リースバックは賃貸借契約が必要となりますが、契約方法が「定期借家契約」になっていることがあります。定期借家契約では期間が満了すると再契約を交わす必要がありますが、大家側が再契約に応じなかったり、家賃が上がってしまう場合があります。契約時には「普通借家契約」で契約できることが望ましいでしょう。

想定外の長生き

「長生き」もリースバック時の問題点です。リバースモーゲージでも長生きについて焦点となりましたが、実はリースバックでも同様のことが言えます。
まとまった資金を得て老後の暮らしを送っていても、資金が尽きてしまったら生活ができなくなります。高齢化社会だからこそ、どのような形でも資金が尽きてしまう問題を想定しておく必要があるのです。

仕組みが複雑

リースバックは通常の不動産売却や賃貸借契約とは方法が異なっており、高齢者がその仕組みを理解しながらリースバックを進める際には注意が必要です。売却後のメリット・デメリットを冷静に分析しながら売却するためには、賃貸借契約や売却代金、家賃のしくみなどを理解する必要があります。

家賃が相場より高くなる可能性がある

リースバックではローンの返済はありませんが、継続した家賃の支払いが必要です。家賃は物件の買取価格や投資家の期待利回りによって決まるため、地域の賃料相場より高くなる場合がありますが、必ずしもすべてのケースで高くなるとは限りません。

 

リースバックのトラブルに注意

リースバック契約において、悪質な業者による不正や過剰な家賃請求が問題となるケースがあります。契約者がリースバックの仕組みを十分に理解せずに契約すると、家賃が相場よりも高額になったり、定期借家契約の更新ができないなどのトラブルに直面することがあります。

国民生活センターには、リースバックに関する苦情が寄せられており、契約時には信頼できる業者を選び、契約内容を十分に確認することが必要です。家賃設定や契約形態についての詳細な確認は重要です。

 

まとめ

本記事では、長生きをテーマにリバースモーゲージとリースバックの注意点をわかりやすく解説しました。
この2つの契約はいずれの場合も高齢の利用者が増加しており、安心できる老後の生活資金づくりに活用されていますが、両者の仕組みは大きく異なっています。お手持ちの不動産を有効活用できる契約ですが、自分に合った契約はどちらなのか、慎重に判断することが大切です。

また、相続にも影響を与える契約のため、できる限りご家族と話し合った上で契約を交わすことが望ましいでしょう。
弁護士法人リーガル東京はリースバックに関するご相談に幅広く対応しています。債務整理や相続に関するお悩みにも法的なアドバイスを実施しており、1人でも多くの方が安心してリースバックができるように尽力しています。まずはお気軽にご相談ください。

 

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
弁護士法人リーガル東京は弁護士・税理士などの専門家集団です。当法律事務所に相談依頼するだけで、購入先紹介・売買契約締結交渉・残債務整理・登記手続・税務申告のワンストップサービスを比較的低額の料金でご提供致します。

この記事を見ている人はこんな記事も見ています

       © 2023 リーガル東京グループ.