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任意売却とは?わかりやすく解説|競売・通常売却との違いも

住宅ローンは一般的に30年以上の借入期間で金融機関と契約する方が多く、長期的な返済を行う必要があります。しかし、不況や新型コロナウィルスなどの社会情勢の変化により、失業・転職などを経験する人も少なくありません。やむを得ない事情で任意売却を選択する人もいます。

そこで、この記事では任意売却とは一体どんな手続きで、競売とはどう異なるのか、わかりやすく解説します。住宅ローンの返済に悩んでいる方は、ぜひご一読ください。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンなどの融資を受けている人と、その人が借り入れしている金融機関(債権者)とが合意することにより、住宅ローン(融資)の返済が困難になった建物を売却する手続きです。住宅ローンは長期的な返済を要するため、返済の途中で病気や収入の減少などの事情で返済が難しくなることは珍しくありません。

住宅ローンが返済できなくなった場合、滞納が長引くと担保にしていた不動産が差し押えられます。そして、裁判所の管理の下で競売する申し立てが行われます。競売市場で売却されると、その建物は落札した人のものになり、落札されたお金は債務の返済に充当されます。

住宅ローンを滞納してしまい、競売で落札されてしまうと、住まいを失う上に残債も残っていれば自己破産せざるを得ない可能性が高まります。任意売却はそうなる前に打てる対策方法なのです。

任意売却と競売の違い

任意売却と競売の違いとは、一体どんな点なのでしょうか。4つの項目を挙げて、違いを紹介します。

違い1 売却金額と残債金額

任意売却は、不動産相場に近い金額で建物の売却ができることが多く、残債に充当できる金額も大きくなります任意売却なら住宅ローンの残債が小さくなります。

競売の場合、一般的には不動産相場の7割程度でしか売れないと言われており、残債に充当しても高額の残債が残ります。競売後もローンの返済をせざるを得なくなり、自己破産の可能性が高まります。

違い2 残債の返済方法

任意売却は、残債の返済方法について、金融機関や保証会社に交渉ができます。任意売却後はゆとりのある返済が許可されることが多く、生活が再建しやすいでしょう。

住宅ローンの残債があると分割返済ができる場合もありますが、一括返済を求められる事も多く、返済交渉が難しい傾向があります。

違い3 周囲に知られるリスク

周囲に知られるリスクは競売の方が高くなります。競売の申立てが行われると、裁判所の職員による現地調査が行われ、競売対象物件の情報公開を行います。不動産業者が現地の物件を見に来るなどの事態も避けられず、周囲に競売が知られる可能性は高くなります。

一方、任意売却は裁判所を介さない手続きのため、競売物件情報として公開されたり、現地調査を受けたりすることもありません。不動産の売買情報としてサイトに載ることはありますが、競売よりも周囲に知られるリスクは低いと言えるでしょう。

違い4 退去や引っ越し関連

任意売却は金融機関や保証会社にさまざまな交渉を行うことができ、交渉次第で引っ越し費用を売却代金から受け取ることができたり、退去予定日を決めたりすることができます。柔軟に対応してもらえるので、次の住居先にすぐに引っ越さなくてはいけないなどの負担が減らせるのです。

一方の競売の場合、引っ越し費用を競売による売却代金から受け取ることはできません。落札者が早期退去を求めて引っ越し代金を支払ってくれるケースは少なく、退去に関しても引渡命令が行われており、従わなければ強制退去が行われています。

このように、任意売却と競売には大きな違いがあります。返済に行き詰まってしまうと競売まで何もできないと諦めてしまう人もいますが、競売と比較するとメリットが大きい任意売却を目指しましょう。

任意売却と通常の不動産売却との違い

では、任意売却は通常の不動産売却とどう違うのでしょうか。通常の不動産売買との違いは、以下の2点です。

1.債権者の同意

任意売却は住宅ローンの残債があり、抵当権も残っている状態の建物を売却するため、債権者である金融機関や保証会社の同意を得る必要があります。許可が下りなければ売却することはできません。
通常の不動産売買はアンダーローンなので所有者の意思で自由に売却できますが、抵当権を持つ債権者との連絡などは必要です。

2.売却価格

通常の不動産売買の場合、所有者が納得した金額で売却することができます。しかし、任意売却の場合は先に述べたように、債権者の同意の下で売却を進める必要があります。金融機関や保証会社が納得できる売却価格でなければ、同意が得られにくいのです。

金融機関や保証会社としては、より高く売却させ、住宅ローンの返済に充当させたいと考えています。そのため、売却価格も債務者である所有者や仲介する不動産会社が自由に決めることはできません。

任意売却を検討した方がいいケース

住宅ローンの返済に行き詰まってしまった場合、多くの方々がその他の金融機関から借り入れをし、何とか返済しようと苦労を重ねてしまいます。
そこで、この章では任意売却を検討した方がよいケースを紹介します。

ケース1 収入が減少し、回復の見込みが難しい

勤務先の倒産や収入の大幅な減少などで、返済に必要なお金が捻出できず、回復の見込みが難しい場合は任意売却を検討しましょう。病気などのやむを得ない事情で、転職や再就職が難しい場合も同様です。

ケース2 複数の借入があり債務整理を検討している

住宅ローン以外にも奨学金や消費者金融からの借入などがあり、どの返済にも追われている場合は債務整理を検討する方も多いでしょう。個人再生手続きで債務整理する方法もありますが、生活状況によっては任意売却を検討した方が、生活を再建できる可能性があります。

ケース3 すでに滞納が始まっている

住宅ローンの滞納がすでに始まっており、どのように対処していいかわからない場合は、解決方法の一つとして早期に任意売却を検討されることがおすすめです。

ケース4 離婚や死別などで住まいの処分に悩んでいる

夫婦で支払っていた住宅ローンが、離婚や死別などの事情で返済に悩んでいる場合、任意売却を検討することがおすすめです。

任意売却できないケース

任意売却は競売よりもメリットが多いですが、任意売却ができないケースもあります。
任意売却ができないケースは以下8つが挙げられます。

1.オーバーローンで住宅ローンを延滞していない
2.債権者が認めない
3.任意売却後の残債額が大きい
4.共同名義人・同居人の同意が得られない
5.競売開始され、買主を見つける十分な時間がない
6.不動産所有者本人が手続きできない
7.税金の滞納処分を受けている
8.買い手がつかない

任意売却は、すでに住宅ローンの返済が滞納している時に使える方法です。現在返済が苦しい状態であっても、まだ返済できている場合、損切りを認めてくれないので任意売却はできません。また、不動産を所有している本人が任意売却手続きする必要がありますが、所有者が病気や失踪などで不在であったり、認知症などで意思確認できなかったりする場合には、売却手続きが進められません。(※成年後見人の申立てなどを検討する必要があります)

任意売却できないケースについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却ができない8つのケース|任意売却できなかった場合も解説」

任意売却のメリット・デメリット

任意売却のメリット・デメリットを確認しておきましょう。

詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
「任意売却にデメリットはある?メリット・手続きの流れを解説」

1.任意売却のメリット

任意売却は、債権者である金融機関と保証会社や債務者(ローンを借りた方)との間に、交渉の専門家に入ってもらうことにより、競売よりも高く売れます。引っ越し代金などの交渉もできるため、競売より有利です。残債も分割返済の交渉ができます。

新しい家主になった人との交渉次第では、リースバックや転居先のスケジュール交渉もできます。リースバックが認められると、売却後も住宅に住み続けることができ、将来的に買い戻しも可能です。

2.任意売却のデメリット

任意売却はリースバックをしない場合、住まいを失うことになります。転居先を確保する必要がある点では、競売と同じです。また、任意売却は金融機関や保証会社以外にも、連帯債務者や同居人の同意も得る必要があります。

任意売却は競売と比較すると交渉の余地がある分、知識と経験のある専門家に依頼しないと、任意売却が認めてもらえない可能性があります。不動産業者に依頼するケースも見られますが、知識や経験に乏しい業者に任せてしまうと、債権者との交渉決裂も予想されます。

リースバックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却にリースバックを併用して住み続ける|メリット・デメリットを解説」

任意売却の流れ

任意売却を進める場合、どのような流れで行われ、どの程度の期間が必要でしょうか。任意売却は以下7つのステップで進行します。

1.金融機関からの督促
2.弁護士などの専門家へ相談
3.現状の把握
4.債権者との交渉
5.任意売却の開始
6.売買契約締結
7.不動産の引き渡し・引っ越し

任意売却は交渉に時間を要することも多いため、金融機関から督促が始まったらすぐに弁護士へ相談しましょう。

任意売却の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却の流れと期間|注意すべき期限も解説」

離婚時に任意売却する場合

任意売却は離婚時に検討される方も多くなっています。住宅ローンの残債がある建物の処分に困ったら、離婚の前段階で方針を決めることが重要です。夫婦のどちらか一方が返済を続けていても、収入の減少などによって滞納してしまうことは多く、離婚後に任意売却や競売に発展することがあります。そうなる前に処分をし、返済計画を作ることが大切です。

離婚後は音信不通になってしまったり、連帯保証人となっている夫婦のいずれかが頑なに拒否したりすることも多いため、離婚前に弁護士に相談しながら任意売却を検討しましょう。

離婚時の任意売却については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「【離婚時の任意売却】メリット・デメリット・売却タイミングを解説」

まとめ

任意売却はデメリットがあるものの、競売と比較するとメリットも大きいため、現在住宅ローンの返済に悩んでいる方はご検討されることがおすすめです。

任意売却は債権者との交渉など、実績や経験が求められる手続きです。ぜひ弁護士法人リーガル東京へお問い合わせください。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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