任意売却と競売の違いを比較|メリット・デメリットも詳しく解説
住まいを購入する際に、低金利で高額の融資を受けられることから住宅ローンを活用する方は多いですが、もしも返済に行き詰まってしまったら、どのように対応するべきでしょうか。
住宅ローンを滞納してしまうと、督促が行われるようになります。督促の段階でも返済が数カ月出来なかった場合、債権者である金融機関や保証会社またはサービサーは、競売に向けて準備を始めます。競売は住宅ローンを借りている債務者にとってはデメリットが大きく、「任意売却」による解決がおすすめです。
この記事では、任意売却と競売の違いについて、分かりやすく比較しながら解説します。メリット・デメリットにも触れますので、ぜひご一読ください。
任意売却と競売の違いを比較
住宅ローンの滞納やその他の経済的理由で、生活苦に陥っている場合「家を手放す」ことで解決できるケースがあります。住宅ローンの滞納がある中で家を手放す方法には、任意売却と競売という2つの方法があります。
では、任意売却と競売の違いとは、具体的にどのようなものでしょうか。ここでは、7つの項目について、表形式でまとめます。
任意売却 | 競売 | |
売却価格 | 不動産市場価格に近い価格で売却できる | 不動産市場価格の約7割程度に留まることが多い |
スケジュール進行 | 債務者の意思で進められる | 強制的に進む |
プライバシー | 周囲に知られにくい | 周囲に知られやすい |
居住の継続 | リースバックなどを使えば継続できる | 売却後は困難 |
引っ越し費用 | 貰える可能性が高い | ないことが多い |
滞納した税金 | 売却金額から充当できる場合がある | 自己負担 |
残債の返済 | 残債の返済で悩むことが少ない | 残債が残ることが多く、返済に悩む |
任意売却のメリット
任意売却は競売よりもメリットが多いため、住宅ローンの滞納後、競売に至ってしまう前に、任意売却を決断されることがおすすめです。
では、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。以下3つのポイントを解説します。
メリット1 売却価格が競売よりも高額
任意売却は競売と比較すると、より高く住まいを売却できます。不動産の市場価格に近い金額で売却できるため、市場価格の7割程度でしか処分できない事が多い競売よりも、高額の売却代金が得られます。つまり、競売よりも住宅ローンの残債を減らせるのです。
任意売却は、市場を介して自由に売買できるため、競売のように制約がありません。少しでも多く残債を減らすことで、生活の再建もしやすくなります。
メリット2 周囲の人に知られにくい
お子様がいらっしゃる方や、ご近所の方々との交流も深い場合には、できれば住まいを売却することを知られたくないでしょう。競売は裁判所サイト(BIT)で物件についての詳細な情報が公開されます(室内の写真・権利関係など)。任意売却は競売とは異なり、裁判所が売却について公にすることはありません。不動産会社のサイトに売却情報が掲載されることはありますが、住宅ローンの滞納により売却することまでは周囲には知られません。
また、親子間売買などの方法なら、不動産会社のサイトにも情報が掲載されないため、周囲に知られないまま穏便に手続きが進みます。
親子間売買については、こちらで詳しく解説しています。
「任意売却での親子間売買|メリット・注意点を解説」
メリット3 完済できることが多く、残債があっても交渉できる
競売の完了後は、残される住宅ローンの残債について、一括返済が求められることが多いです。しかし、任意売却は市場価格に近い金額で売買できるので、残債が残らないことが多く、仮に残債があっても債権者側と交渉ができるため、残債の返済は分割が認められるケースが多くなっています。無理のない範囲で返済できるため、自己破産を避けられる可能性も高いでしょう。
任意売却後の残債については、こちらで詳しく解説しています。
「任意売却後の残債が払えない場合どうなる?返済方法や対処法を解説」
任意売却のデメリット
競売と比較するとメリットが多い任意売却ですが、デメリットもあります。任意売却は不動産市場で売却を目指す方法のため、買い手が見つからない場合には競売に至ってしまいます。また、オーバーローン物件だと債権者の同意が無ければ任意売却をすることはできません。オーバーローン物件では債権者が納得できる売却価格である必要もあります。
オーバーローン物件の任意売却は債権者や連帯保証人への交渉なども行う必要があり、時には税金の滞納についても交渉に臨む必要があります。
任意売却は単なる不動産売却とは異なるのです。専門知識と交渉力がある専門家に依頼しなければ、うまく手続きが進まないことも知っておきましょう。
■任意売却のデメリットを回避するためには?
任意売却のメリットを享受するには住まいを売却する必要があります。つまり、任意売却のデメリットを回避するためには、競売に至る前に物件の売却を成立させることが必要です。そこで、以下のポイントを押さえておきましょう。
・任意売却実績が豊富な専門家に相談する
任意売却は競売が差し迫っている状況でも、成功できることがあります。しかし、債権者との交渉や売却手続きが遅れてしまうと、競売が開始されてしまいます。不利な状況に思えても、諦めずに任意売却の実績が豊富な専門家に相談をしましょう。特にオーバーローン物件で債権者や連帯保証人への交渉が必要なケースでは、法的な専門知識があり任意売却に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。
・親や兄弟など、身内の援助も視野に入れる
任意売却は不動産市場での売買だけではなく、親や兄弟などの身内に協力をあおぐことで、成功するケースもあります。やむを得ない事情で住宅ローンが払えなくなってしまったと知ったら、資金を援助してくれたり、親族が住まいを購入してくれたりすることも多いのです。滞納について相談をすることは心苦しいかもしれませんが、頼れる身内の方に相談することも、視野に入れましょう。
競売のメリット
競売は債務者の同意を得ることなく、強制的に進んでいく手続きです。そのため、債権者と売却の交渉を行ったり、不動産の売却手続きを行ったりする必要がありません。競売が任意売却よりも優れている点は非常に少ないですが、あえて挙げるとすればこの点がメリットでしょう。
また、競売は退去命令が出るまでは住むことができますが、引っ越し費用がもらえない場合も多く、早急に次の生活拠点に移る必要があります。任意売却と比較したら、やはりメリットは多くないと言えるでしょう。
競売のデメリット
ここまで説明してきたとおり、競売は任意売却よりもデメリットが多く、できれば回避が望ましいものです。競売におけるデメリットを整理しておきましょう。
デメリット1 売却価格が任意売却より安くなる
競売は任意売却よりも、売却価格が低くなります。不動産市場の中で売却できるものではないため、相場の7割程度に留まってしまうケースが多いのです。その理由として「内見できない」「購入までに熟慮できる期間が短い」などが挙げられます。任意売却であれば、相場と同等の金額で売却できる可能性があります。
売却価格が安くなるということは、住宅ローンの残債に充当できる金額も少なくなるため、多くの債務が残されてしまうでしょう。
デメリット2 周囲の人に知られる
対象となった物件についての情報が裁判所サイト(BIT)で詳細な情報が公開されます(室内の写真・権利関係など)。物件の住所なども公開されてしまうため、周囲の人に競売の事実が知られてしまいます。競売は住宅ローンの滞納があったと推測する人も多く、経済的に困窮している事実も知られてしまいます。
任意売却は競売情報のように扱われることはありません。そのため、もしも売却の事実が知られたとしても、周囲にご自身の経済事情まで知られることはないのです。
デメリット3 立ち退かなくてはいけない
競売は、入札開始から最長でも1か月程度で購入者(買受人)が決まります。購入者(買受人)が決まったら、最長でも2か月以内には退去する必要があります。それ以上住もうとしても強制執行を受けるため、迅速に次の住まいへの転居が必要です。
競売ではなく任意売却を選択すれば、リースバックや親子間売買を使うことで、退去を避けることもできます。
リースバックや親子間売買など自宅に住み続けられる方法については、こちらで詳しく解説しています。
「住宅ローンが払えなくなった場合でも自宅に住み続けられる方法」
まとめ
この記事では、任意売却と競売について、違いの比較を解説しました。住宅ローンの滞納後に家を手放す、という点ではこの2つの方法は同じに見えますが、中身は似て非なるものです。任意売却の方が債務者にとってメリットは大きく、方法によっては退去せずにそのまま暮らすこともできます。
ただし、競売が始まってしまうと時間的猶予が無いため、任意売却の成立を目指すことが難しくなります。住宅ローンの滞納にお困りの場合、まずは早急に任意売却に精通する弁護士へのご相談がおすすめです。お気軽に、弁護士法人リーガル東京にご相談ください。
監修者
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
-コメント-
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